6,
----------

それっきりその話題はおざなり。



この高校には珍しいくらい騒がしい体育館では、今からミスコンが始まるらしい。
それはとても大きな盛り上がりを見せていた。
皆、クラスや部活のアイドルが頂点に立つことを望んでいるのか、旗やら何やら振りかざしている。

そんな中、体育館の端の方で並んで立つ2人。
アホだなぁと呟く西條の隣で、ぼんやりと祐樹は宙を見つめた。


(好きな人、か)


あまりそういった方向に余裕を持てなかった祐樹にとって、それはまるでファンタジーの言葉。

恋愛をしたことが無いわけじゃない。
ましてや、西條に思い人がいるから辛いなどと言うわけではない。
ただ、この重苦しい枷の理由が分からないのだ。


(…腹立つ)


なんだか自分が西條を好きみたいじゃないか、と祐樹は考える。
途端に、腹の底からイライラが湧き上がり、

(ああもうちくしょう!)

自棄だと、見ていなかったステージを見ると、既にミスコンは終わり次のコンテストが始まっていた。


「では飛び入り参加大募集!男前はどんどん参加してくださいね!」

その瞬間、祐樹の頭上にひとつのきらめきが舞い降りた。
にた、となかなかしない意地悪な笑みを浮かべ、隣で興味無さそうにステージを見る西條の腕を掴んだ。
いきなり掴まれたので「便所か」と聞けば、「違う」と睨まれる。
なんなんだと、引っ張るがままに西條が着いて行けば、

「すみません、この人参加お願いします!」

ステージ裏に連れて行かれた。
西條の頬が、引きつる。
まさか、とは思うがそのまさかだったのだ。

「きゃあ!いい、いい!どうぞお願いします!」

西條を見た瞬間、受付らしき女子生徒がくるくると小躍りしながらエントリーナンバーを楽しそうにつける。
あまりの急なことに、何も言えない西條。
そんな彼をよそに、

「推薦者も何か貰えるンだよな!」

「優勝したら出場者はテーマパークペアチケット、推薦者はお米だよ」

貰えるお米を糧にしようと、祐樹は張り切っている。
頭につけたウサギの耳をぴょこぴょこと揺らしながら、嬉しそうに跳ねた。
もう、本当のウサギだ。と西條は思う。

「あの、お名前は!」

「西條だが…おい、岡崎」

名前などを聞かれている途中、西條は祐樹の頭を髪ごと引っつかみ、とてつもない形相で見下ろした。
思わず祐樹の背筋が凍りつく。

「後で覚えてろよ…」

「…はい…」

まさに蛇に睨まれるカエル。
だがしかし、祐樹の目的である「西條をふりまわす」ことは出来たのだ。
多少の脅しは慣れたもの。


そんな訳で、なぜか西條は男前コンテストにでるはめになった。
そんなに自分の容姿に自信があるわけでも、大勢の前に出ることも好きではない西條にとっては地獄の始まりだった。


「あの、下の名前は?」

「…言わないとダメか」


そして自分の名前も好きでは、無かった。

- 16 -


[*前] | [次#]

〕〔サイトTOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -