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「岡崎、首輪売ってンぞ首輪」

「それを俺にどうしろと…」

「もちろん着け…」

「俺は変態っスか!?」


近くにあったフリーマーケット形式のクラス展示を眺めながら…と思えばこの有様。
男前とメイド服が並んでいる時点で異様なのだが、会話も異様で。
首輪やリードなど、ペット用品を売る生徒はただただ変な汗をかくばかり。

「な、これいくら」

極力目を合わせまいとしたのだが、いきなり話しかけられ体が跳ねる。
仕方ないと目の前の男に目を向けた。
やはり首輪を買うのか、と思えば。

「…これ、ですか?」

「ああ、いくら?」

西條が指差したのは、小さなウサギのぬいぐるみ。
白くてふわふわしているが、如何せん他の生徒のお古なので所々汚れている。
なんとなく入れてみた代物。
それを欲しがるなんて、一体何を考えているんだろうか、と困惑した。
この男前は意外と趣味がメルヘンなのだろうか。

思うは、祐樹も同じ。
あんぐりと口を開けて、西條を穴が空くほど見る。

だが、当の本人は視線も気にせず、言われた値段を払いそれをポケットにしまった。
小さなウサギのぬいぐるみは、西條のポケットの中で小さくつぶれるが、決して乱暴にしまったわけではない。
大事そうに、失くさないようにしまったように思える手つきでしまった。

そのウサギを祐樹は不思議な目で見つめる。
何となく、小さく飛び出たウサギの耳を自分の付けているうさ耳と重ね合わせてみた。


「おい、フィーリングカップルだってよ、お前やったら男に矢印向かされるンじゃねぇ?」

フリーマーケットを出た後、特にどこに寄るでもなく2人はクラス展示を外から見ながら歩く。
相変わらずメイド服の祐樹をからかいながら、人混みを器用に避け進む西條。


「きもいこと言わないでくださいよ!ありえねぇし!」


それに必死に反抗しながら、なんとか人混みに揉まれそうになりながら西條の後をつく祐樹。

案内しろ、と言っていたくせになんという理不尽な男だろうと歯軋りを立てそうになる。
ただでさえ祐樹は動きにくい靴を履いているのだ。
普段履くことなど二度と無いであろう、ヒールの高いローファー。
祐樹の女装に対する女子の完璧さが仇となったのだ。
不器用な祐樹は、うっかりすると転びかねない。

かと言って足元に注意すれば人にぶつかるし、前を注意すれば確実に転ぶ。
仕方なく、両方に注意しようと祐樹が気を張った瞬間。

「…西條さん?」

もう1つあった困難が、居なくなった。
足元と他人の障壁にばかり注意していたおかげで、西條を見失ってしまったのだった。
一気に冷や汗が背中を伝う。

祐樹は、自分の学校なので迷うことは無いが問題は西條である。
もし、ここでほっといたら…安易に想像できる西條の怒り顔。

祐樹にとって、地獄間違いなし。


「さ、西條さん!西條さんっ!」


必死に人混みを掻き分けながら彼の名を呼ぶ。
何人かが何事かと言わんばかりに振り向くが、今はもうどうだっていい。
祐樹の頭の中は西條の姿ばかりを探した。
背が高いし、髪の色は暗い茶色なので見つかるはずだ。
しかしなかなか見つからない。その上、歩きづらくて注意が散漫になるのだ。

すると、人の足に祐樹の爪先が触れた。
と、思えばぐらりと揺れる身体。

まずい、と祐樹が思った瞬間にはすでに重力のままに床へ落下寸前に。

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