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今月のシフト表をぼんやりと眺める。
祐樹は週4日程度で入っている。時たま休日は朝からフル出勤をして時給を稼いだりしているのだが、最近はあまりしていなかった。
それよりも問題は明後日の出勤である。
ちょうど西條と被っているのがその日。
その日に言わなければならない。
来月の20日を見ると、ちょうど西條は非番。
なんという神様の悪戯だと思うも、その日は彼女とデートなどと言われれば何だか悔しい。
願わくば空いていること、もしくはシンプルに「ムリ」と言われることを!と思いながら勉強机の電気を消した。
「祐樹、お風呂沸いたよ」
「ああうん、入るよ」
「遅くまで勉強、お疲れ様」
「ん、どーも」
祖母が祐樹を見てそれこそ幸せそうに微笑む。
よろよろと居間に戻る姿を申し訳なそうに見つめ、ため息をふと吐いた。
祖父母には無理して文化祭に来て欲しくなかった。
祐樹の通う高校の文化祭は無駄に凝っているため、より多くの来場者が毎年訪れるのだ。
そこに巻き込まれたら体を痛めてしまうかもしれない。
祐樹は文化祭の案内は渡さないようにしよう、と思いながら明日の準備を手早く済ませた。
「さて、文化祭まであと1ヶ月をきりました」
ロングホームルーム。
案の定話題は文化祭のことである。
老体まえではいかなくとも、40を過ぎた担任はテスト前と違い朗らかにその話題を出す。
「クラス展示は何をしますかね」
手をあげて答えてください、と言えば当たり前に皆「お化け屋敷」「喫茶店」と答える。
そりゃそうだなあ、と祐樹は思いながら机に顔を伏せた。
「では、文化祭は仮装喫茶で決まりました」
ば、と顔をあげる。
喫茶店はまだしも、仮装!
祐樹は慌てて雄太の方を振り返れば、げんなりとした顔を返しただけだった。
どうやら女子がその方が可愛らしいと言ったからである。
このクラスは女子が優位。
どんな格好をさせられるのか。
祐樹は頭を抱えながらまた顔を伏せた。
「ま、喫茶店ならそんなに準備いらないからいいじゃん」
「そだけどサ」
またもや図書館で勉強した帰り。
ぶつくさと愚痴りながら駅まで向かう。
高校は地元から離れているので仕方ないが、この通学も面倒だなという愚痴も挟みながら。
「それより、西條さん」
「あー…」
口を尖らせながら祐樹は頭を掻く。
明日言うことは決まっているが、どうも言いにくい。
しかもいつ言うか分からない。
恐らく仕事中に言えば「今言うことか」と睨まれること間違いなし。
「…ま、ぼちぼち…」
「がんばれよ」
決戦は明後日。