小説 | ナノ

メンチとトリコへ


清々しいほど晴れた青空が見える。太陽がとてもまぶしい。
その中を真っ逆さまに落ちている俺が冷静でいられるのは、夢オチという希望を捨てきれないでいるからだ。現実逃避ともいう。
だがそんな一時的な逃避では現実に戻るのも早いものである。

「ちょっと悠人!聞いてんの!?」

メンチの声がキンキンと頭に響いた。



チラとメンチに視線をやるとキレ気味の顔で睨まれた。
どうやら現実逃避中に話しかけられていたらしい。
メンチの人間離れした眼光で睨まれた俺の心臓は、今にも止まりそうだ。

「…メンチ、ここはどこだ」

心臓が止まってしまう前に何とか返事をする。メンチの普段通りの態度のおかげか、声は震えていない。
しかしメンチの眼光のおかげで心拍数は相変わらず凄いことになっている。正直どの魔獣よりも恐ろしいぞ…。

「そうね…今は、地上から結構離れた空中にいることくらいしか分からないわ。
いつからここにいたか、どうしてここにいるのかもね。」

普段通りと思ったメンチも少し焦っているようだ。
俺が話しかけてもそっぽを向かないほど、今は余裕がないらしい。状況を見るだけで精一杯という感じだ。
正直いって似合わないが、状況把握が苦手な俺には助かる。

それにしても、メンチもこの状況の原因がわからないのか。
実は俺もいつの間にここにいたのか覚えていないのだ。
木村アント?とかいう魔獣を討伐していたところまでは覚えているのだが…。今更だが木村アントって人間にいそうな名前だな。本当に魔獣か?というか木村アントであっているのだろうか。

そうこうしている間に地上らしきものが見えてきた。見えるまで時間かかりすぎだろ…どんだけ高かったんだ。落下速度も相当なものになっている。念がなかったら体がやばかっただろうな。

「メンチ、こっちにきて」

何やら考えているらしくブツブツつぶやいているメンチを着地に備えて引き寄せる。思いのほか力が入ってしまったらしく、抱き合うような姿勢になってしまった。だがこちらのほうが都合がいい。
メンチの顔が赤い。たぶん自分一人で着地できるのに!と怒っているのだろうが、つい手が出てしまうのだ。庇い癖?…調子乗ってすみません。俺が庇ったところでたかが知れてますよねー。

まあ念を使えば俺にだって着地くらいどうにでもなるのだ。念能力様々である。
念を思いっきり足に溜めて…着地!

ドン!!…と某ワンピース並の効果音とともに無事着地は完了した。周りにでっかいクレーターができたが、2つの命に比べたら安いものだろう。
砂埃がだんだんと薄れ辺りがはっきり目に映る。

「ここは…」

目の前にはボロ…古びた食堂。その隣には巨大な建物…食料庫だろうか。個人が経営しているようだが、ただの食堂とは思えない雰囲気と匂いを放っている。料理人は美食ハンターか?

メンチは食堂に気づかないほど考えに浸っている。そして何故か顔が赤いままだ。
とりあえずメンチを抱いていた手を離すと、後ろから声が聞こえた。

「うっふっふ。地面がひどいことになってるねえ。」



このあとしばらくチヨ婆にお世話になる。メンチはこの世界でも十分通用する腕前なのですぐに店を出す。主人公は食料調達係。二人ともチート。
メンチの店はチヨ婆には劣るが有名になると思う。そこらのレストランより貴重な食材を扱うから富豪の常連客がいっぱいできたり。でもメンチが客を選んだり。
食材の声というか食材がメンチに対して心を開きまくるので毎日開店できる。
主人公もチートでめっちゃ強い。捕獲できないものはない。でもチキンでビビリな上自分の強さに気づいていない。内心がくがくだけど顔は常に無表情。顔の筋肉が死んでる。
そんな二人のもとにトリコたちがきてなんやかんやあるはず。



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