戯れ


重い目蓋を億劫に思いながら目を開ける。闇に慣れた目にはカーテン越しの淡い光さえ眩しい。
朝だ。
きらりと何かが光り、明るすぎて目を細める。刀が朝日を反射していた。
「シキぃ」
徐々に慣れてきた目はベッドに腰掛けて日本刀の手入れをするシキを捉えた。シキはアキラの声に答えるつもりも視線を向けるつもりもないらしい。他の何を扱うときよりも丁寧に刀を手入れする。
「ねぇ」
アキラはそんなシキに慣れてはいるものの、だからといって気分の良いものでもない。押して駄目なら引いてみる、というのもアリなわけで。
首を傾げながら寝惚けた頭で考えること数秒。シキに掛ける言葉として見つけた言葉はあまりに陳腐で滑稽で、思わず笑いがこみあげそうになる。それでも他に思いつかないから声に出してみる。
「俺のこと、好き?」
シキの顔を覗きこんでアキラは問う。
「さぁな」
「そう言うと思った」
アキラはくすくす笑って曖昧な回答に満足し、もう一つの質問を投げ掛ける。
「じゃあさ、俺のこと愛してる?」
「馬鹿か、お前は」
うれしいと、アキラはシキの耳元で囁いた。
「知ってる。だけど俺はシキのことが大好きだし」
アキラは視線を刀からずらそうとはしないシキをうっとりと見つめ、そこに世にも美しい、アキラだけのものを見出だす。
「愛してるよ、シキぃ」
甘えるように体をすり寄せる。シキの横顔に唇を押しつける。シキは払おうとはしなかった。その代わり反応もしなかったが。
アキラはいつものことだと諦めて、ベッドに倒れこむと再びシーツを被った。



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