touch me!


アレニル
やまもおちもいみもない





夜。
ベッドの上に一人でぽつねんと座っている俺が何をしているかと言えば、ジーンズに手を突っ込んでいる。
「ん……あっ……」
妙に疼いた身体を自分で慰めている。それだけ。あいつには今日で二週間、触られていない。そしたら、まぁ、溜まっちまうのが男の性。膨らんだ息子がキツくてジッパーをおろし、下着からぽろりと零れ出た半勃ちのそいつを自分で刺激してやる。慣れた作業だ。
「あれ、るや……」
あいつの手を、声を想像すれば容易く熱が高まっていく。我ながら浅ましいね、全く。
その時、端末が音を鳴らして着信を告げた。タイミングの悪さにぎょっとして肩が跳ねた。
大した用事がなさそうな相手だったら無視して後で掛け直せば良い。億劫な身体を動かして端末を手に取る。ぽぅっと光の灯った電光板に浮かんだ文字は「アレルヤ」。それを見てしまえば通話を受けずには居られない。
いつも通り受けようとして、はっとした。今、俺は何をしてる? 顔を見られたら? ……確実にばれる。
かといって無視は出来ず、動画をオフにして音声オンリーで着信を受ける。
「ニールっ」
弾んだ声が飛び出してきた。
「よ、アレルヤ。元気か?」
「今日でミッションは終わったから、明日には帰ります。それよりなんで声だけなんですか? 貴方の顔が見たいのに……」
訝しむ声に舌打ちしそうになる。その間にも中途半端に立ち上がったそこが、むくむくと育っていく。早く切らないと、まずい。
「なんてこたねぇよ。俺はいつも通りだ。明日帰ってくるんだろ? もう切るぜ」
素知らぬ風を装う。声が上ずってしまう。
「待って」
慌てた声が追い掛けてきて、切るに切れなくなる。
「本当? ねぇ、風邪でもひいたんですか? 心配なんです。なんか声も熱っぽいし……顔、見せて?」
俺はこいつの甘えた声にとことん弱い。
「何でもないって」
「一目でいいですから」
こいつが心配性だってことも、意外に頑固だってことも知ってる。諦めて映像のスイッチを入れた。途端にアレルヤの顔が映る。鼓動が跳ねる。ったく、十五、六のガキでもないのに、恋人の顔と声だけで身体が熱くなる。こっちの様子も届いてるはず。
「っ……」
目を丸くしたアレルヤの、息を飲む音がした。高性能なマイクは微かな音まで懇切丁寧に拾う。
「……もう、いいだろ」
むすっとした表情でボタンに手を伸ばす。
「ニール」
また止められて、名前を呼ばれて、指が震えた。
「ひょっとして……一人でしてました?」
こいつに隠し通せるわけがない。
「わ、るいかよっ」
開き直って画面の中のアレルヤを睨み付ける。みるみる火照っていく顔が熱い。身体の中心が脈打つ。
「……僕のこと、考えてしてくれた?」
「当たり前だろ! 他に誰が居るんだよ。今だってお前のこと考えながら……」
そこまで言ってしまってから、はっとして手で口を覆った。
「え? まだ出してないんですか?」
「……っ」
こういう時はどういう顔をすべきか。とりあえず、俯く。そしたら情けなく勃ち上がってる自身が見えて居たたまれなくなる。アレルヤの顔が見れない。
「手伝ってあげましょうか?」
「は?」
悪意のない声が聞こえて間抜けな声を出してしまった。何言ってんだ、こいつ。画面の向こうから何を……。
「パンツはもう脱いだ?」
「え、あ、まぁ、途中まで……」
って、答える俺はバカか。素直すぎる質問にすっかりアレルヤのペースに巻き込まれてる。
「じゃあ、勃ってる?」
「なっ……」
あからさまな単語にペニスがふるりと震えた。ずくずくと腰が重い。アレルヤと目が合った。かぁっと身体に火が灯る。くすくすと軽い笑い声が耳を打つ。
「勃ってるみたいですね。端末は左で持ってるのかな? 右手は空いてますよね」
楽しげな声が恨めしい。どんな状態だと思ってんだよ。アレルヤの声に、ペニスは角度をどんどん増していく。
「右手で、触ってみてください。僕の手だと思って……」
もう自棄だ。大体、中途半端な状態が辛すぎる。そろりと伸ばした右手で幹を掴む。
「ふぁ……」
見られている。見られているのは顔だけなのにそれだけで興奮して、軽く触っただけで甘い声が漏れてしまった。ティーンエイジャーじゃあるまいし、一人でする時はこんなにはならない。
「僕はいつも、出っ張ってるところを擦って……」
強く擦る。アレルヤの大きくて少し浅黒い、骨張った手。意外に繊細で器用な手が、指が俺のそこを撫でる。
「っあ、あ……」
「とろとろたくさん出てくるいやらしい汁を馴染ませるように塗り付けながら、全体を包むみたいにしてゆっくり上下に動かして、扱いて……」
言われた通り、先走りがこぽりと溢れて幹を伝う。アレルヤの手が俺ので汚れてべたべたになって、それがぬちゃぬちゃ音を立てながら俺のを上下に責め立てる。
「あれ、あれる、や……っぅ、ん」
絡み付く先走りで滑りが良くなり、ぬるぬると刺激してやればあっという間に限界まで張り詰める。みっともなく半開きにして喘ぐ口の端からとろりと涎が零れたのがわかった。アレルヤの息を呑む音までするが、構っていられない。
「気持ち良い? 先っぽに爪を立ててぐりぐりして……」
くぱくぱと開いたり閉まったり喘ぐみたいになってる先端に人差し指を突き立てた。
「あ、ぅ……い、い……あ、あぁぁっ」
どぴゅっと、いつもの自慰よりも勢い良く白濁が飛んだ。暫くしてなかったせいか随分ねばっこい。端末には辛うじて掛からずに済んだ。はぁはぁと荒い息を吐き、端末を左に持ったままベッドに倒れこむ。
「ニール? もうイッちゃったの? 早いですね」
からかうように笑う声が遠くに聞こえる。
やっちまった。だるい。
年下に喘がされただらしない顔を見られないように枕に顔を埋め、ついでに流した涎を拭い取る。
「顔、見せて?」
せがまれて紅潮しているだろう顔を向ける。視界が滲んでる。信じらんねぇことに、良すぎて涙まで流したのか、俺。
「お、前……とんでもないことするのな」
息を整えながら軽く詰る口調で言う。画面の向こうではアレルヤがきょとんとしている。天然でこれをやってのけるのか。末恐ろしい。
「だって、実は僕も明日まで待ちきれなくて……」
アレルヤの頬が赤い。息も上がってるみたいだ。
「ニール」
熱っぽく名前を囁かれてまた腰の奥が熱くなる。
「何だよ」
何でもないフリをして答える。
「もうちょっと、付き合ってくれませんか?」
申し訳なさそうな、先を期待するような声。予想通りのそれに身体が火照る。アレルヤの目が潤んで狂暴な雄のそれになっている。
「声聴きたい」
「……年下の頼みを断れるわけねぇだろ」
ぼそっと建前を呟く。
本音? ……聞くなよ。







続くかも



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