おやすみ。


ニルティエ




「ロックオン」
「何か用か? 美人さん」
ロックオンの部屋を訪ねてきたティエリアは、扉を開けたロックオンをじっと見つめた。
「ロックオン」
「だから、何の用だって」
ロックオンの瞳を捉えたまま、動こうともしない。
「ろっく、おん」
ティエリアはロックオンを見上げていた首を僅かに横に傾げた。
「……どうした。調子でも悪いのか」
ティエリアの無表情だった顔が、僅かに表情を示す。何かに疑問を持っているかのような表情。

そしてそのまま、倒れた。

「ティエリア!?」
前のめりに倒れこんだティエリアをロックオンの胸が受け止める。
「おい、ティエリア、大丈夫か? とりあえず入れ」
「あぁ」
ロックオンは頼りない様子のティエリアに手を差し伸べた。掴まったティエリアを部屋へ引き込む。後ろで扉が静かに閉まる。
「ほら」
ティエリアの手を引いてベッドに誘う。
「座れ。それとも少し寝るか?」
「いや……僕は平気だ」
そう言ってベッドに腰掛ける。
「そうは見えないがな……何があった」
「何……」
ティエリアの視線が宙を彷徨う。それからぼうっとロックオンを見た。
「スメラギ・李・ノリエガから飲料を受け取り、それを飲んだ。しばらくしてから、ロックオンの所へ行け、と言われた」
「ったく」
「何か問題があったか」
「あのなぁ」
何もわかっていない様子のティエリアに、ロックオンは軽く頭をかいて舌打ちした。
「彼女はいつも何を飲んでる?」
「アルコール分を含むものを飲んでいることが多い」
「なぁんで、そこまでわかっててわからないんだよ」
溜め息を吐く。
「彼女は酒を飲む。それをお前に渡す。それをお前が飲んだ」
いつもは白いティエリアの頬が心なしか赤い。鋭い目はとろんとしている。
「酔っ払ってんだよ」
「酔ってなどいない」
「あぁ、はいはい。酔っ払ってるヤツは皆そう言うんだよ。いいから少し寝ろ」
座っていたティエリアをロックオンは無理矢理押し倒した。
「ロックオン!」
「少しくらい寝たって平気だろ」
暴れるティエリアを押さえ、毛布を上から被せる。ぽんぽんと叩いた。
「無理するなよ、ティエリア。体に良くないぜ」
「ロック、オン」
睡魔に従い始めたティエリアの舌は既に回りが良くない。
「なんだ?」
ロックオンはベッドの上で丸まるティエリアをそっと撫でた。
「あなたこそ、無理しすぎなんだ。僕は……」
なおも続けようとするティエリアの頬に手を当てる。
「寝ろ。たまにはゆっくりしたってバチは当たらない」
「あなたは、馬鹿だ……あなたは……」
ロックオンに宥められたティエリアが静かな寝息をたてはじめる。
「ロックオン……」
唇が小さく動いて名を呼ぶ。ロックオンはティエリアの眼鏡を外して、ベッドサイドに置いた。穏やかな寝顔に顔を近付ける。その唇に触れようとして、やめた。代わりに唇で額に触れ、すぐに離れる。
鮮やかな髪をそっと撫でた。



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