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=2粒目 蘆屋道満=
「ちよこれぃと?」
聞きなれない単語を、はっきりと声に出して彼は反応した。
「どんなものかは知っておりまする。召喚されたとき現代の知識も与えられますので。拙僧の時代にはありませなんだが」
「そ、そうなんだ。じゃあ同郷のよしみにあげるね」
少女はおぼつかない手つきで一粒のチョコを彼の掌に置いた。「今日はチョコをプレゼントする日なの。きっとおいしいと思うよ」
「有難うございまする」
彼女の口元は緊張している。たぶん何でもない風を懸命に装っているのだ。
「…よかったら感想教えてね」
そう言って足早に去っていったマスターの背中に、道満はつぶやいた。
「現代の知識は与えられていると申しましたのにねぇ」
道満は頭をめぐらせる。
――こうやって簡単に辺獄へ手をのばす少女をどう扱ってやろうか。
にんまり笑った彼の手のなかで、チョコレートはゆっくりと溶けていく。
2粒目
マスターの好意に気づいてにんまりする道満。でも勘違いしているのは彼の方かも。
道満は知らない。友チョコという概念を…!