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Category : I Think
Update : 2014/11/10[Mon]23:00



 理科の授業で梃子の原理を習う時、役に立つかどうかまで考えていなかったと思う。しかし今、ほぼ毎日のようにコレのお世話になっている。コレがなければ建設現場作業が罷りならないのだ。

 数学の授業で円周率パイを習う時、役に立つかどうかまで考えていなかったと思う。しかし今、ほぼ毎日のようにコレと出会っている。コレがあってこそ建設現場作業が罷り通るのだ。

 つまるところ、小学校〜高校で勉強する物事の大半を小学生〜高校生は「役に立つかどうか?」で見ていない。あくまでも試験や受験に必要な記号としか見ておらず、将来の役に立てるべく具体的に見ている学生はいないと思う。梃子の原理こそ日常生活に近いもののように感じているかも知れないが、例えば円周率なんて「なんの役に立つものか!?」と疑問視しながら勉強している学生のほうが多いのではないか。いや、梃子の原理だって、いざという時の緊急対応手段としか見做していないのかも知れない。まさか頻繁には使うまいと。

 私はそうだった。そして現在、ことあるごとに梃子の原理で資材を揚重ようじゅうし、ことあるごとに円周率を口にしている。

 高校を卒業してから四半世紀も経った現在だ。

 使ってみること、役立ててみることで、物事の趣を手に入れられることが往々にしてある。梃子の原理ってこういうことだったのか!──と。その記号的算出方法こそすっかり忘れていようとも、学生時代よりもずっとニアな物事として手中にしている感じがある。学生時代にはニッチな物事だったが、今やナチュラル当たり前な物事と化しているのだ。

 因数分解だってそうだろう。漢文だってそうだろう。もしやリトマス試験紙だってそうかも知れない。将来、なにがどう役に立つかなんて知れたものではない。

 だから、受験が間近に控える学生諸君、役に立つかも知れない未来をイメージしながら頑張りたまえ!──と述べるつもりはない。サラサラない。そんなモン、よもやイメージできるわけもないからだ。未来を想像できてりゃ世話はない。

 私が言いたいことは「20年後の自分が現在の受験戦争に挑めばわりと良いところに食いこめるはず」ということ。なにやら時系列の変な表現だが、要するに、受験戦争へと突入する前にいったん社会人にでもなって20年ほど生きてみて、趣を手に入れ、タイムマシンでふたたび学生時代へと舞い戻って改めて受験戦争に挑めば、わりかし良いところには食いこめるはずなのだ。だって、因数分解も漢文もリトマス試験紙も、学生である現在よりは遥かにナチュラルな物事となっているはずなのだから。記号として記憶するには1週間もかかることが、日常に則した体験であれば1日で事足りるのだから。

 英語が公用語の企業に勤めてごらんよ。少なくとも、学生時代の「文法が云々」だなんてヤってらんないと思うよ? 否応なく身につかせなくては食べていけないんだもん。そして、きっと彼らは、どの学生よりも英語ができているはず。大学受験のテストを受けてもまずまずの結果を出せるんじゃない?

 タイムマシンのない時代の受験シーズン中にある学生って大変だよなぁ──ということで、あくまでも他人事。当ッたりめぇよ。

 いずれにせよ、できるだけのことはやってみるといい。社会人になったらできないことまでやらされる羽目になるのだから。できるだけでいいと思えば、気楽でしょ?

 さぁ、受験が間近に控える学生諸君、できないことまでやらされるという悪魔的な未来を目指してできるだけ頑張りたまえ!




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