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ルークは、困惑していた。

ジェイドとガイの間に流れる空気が、ピリピリしているのだ。

けれど、二人ともルークから離れないので、ルークとしては頭を掻きむしって逃げ出したいのだが、多分、二人とも追ってくる……。

それはそれで怖いので、ルークは大人しくしているのだった。

(――本当は)

あの大きな樹が、気になって仕方ないのだけれど。



*****

陸艦の一室に流れた、気まずい沈黙を破ったのは、ガイでもジェイドでもなく、ノックの音で。

セントビナーに到着した、という連絡に、ルークはほっと息を吐いた。

だって、二人とも笑顔が怖いのだ。

「ルーク、怪我とかしてないか、大丈夫か?」
「大丈夫だっつの。すげー守ってもらったし」
「当然ですよ、貴方に傷一つでもつける訳には、いきませんから」

そして、ガイはギリギリとジェイドを睨み、ジェイドはガイに冷笑を浮かべている。

二人とも、ルークに向ける視線は、至極柔らかく、暖かい。

「身体面だけじゃなくて、さ。
イジめられたりしなかったか?」
「あ、うん。……は?」
「そんなこと、ある訳がありませんよ。ねぇ、ルーク?」

――ケンカは、オレを挟まずにしてくれねぇかな…。

ルークは、ドアがノックされる寸前、思わず呟いたのだった。



*****

ティア達は、すでに別の兵に連れられて、艦の外に待機していた。

ルークの後ろに控えているガイに目を止めたイオンが、首を傾げる。

「ルーク、そちらは、どなたですか?」
「あ、うちの使用人で、ガイ・セシルだ。
ガイ、ローレライ教団の導師、イオンだ」

ルークが、ガイに少し強い声で言う。
それを聞いて、ニコニコと歩み寄ろうとしていたガイは、ピタリと足を止め、イオンに膝を折った。

頭を下げ、礼をとる。

「初めまして、ガイ。
僕は、イオンです」
「お初にお目にかかります。
ガイ・セシルと申します」

そう畏まるガイの背後で、ジェイドが呟いた。

「そんな礼がとれるなら、最初からルーク様にもとれば良いものを……」

その声が聞こえたのはルークだけで、ルークは僅かに眉を寄せたのだった。

「そんなに畏まらなくても、良いですよ?
どうぞ、立ってください」
「はい。ありがとうございます」

イオンに促されて、ガイは立ち上がり、イオンの後ろに控えていた少女らに目をやる。

「あぁ、守護役のアニスです」
「導師守護役のアニス・タトリンです」
「それと、こちらは、ティア・グランツ」
「………」

アニスは、一歩前へ出て会釈し、マルクト軍に拘束されているティアは、無言で頭を下げた。

「ん?彼女はひょっとして、ファブレ邸に侵入した娘か?」
「えぇ。ですから、こうして捉えています。
後ほど、キムラスカに引き渡しますよ」

ジェイドが頷くと、ガイはほっと安堵の息を吐いた。

「助かったぜ。生かして連れてこいとのお達しだったんだが、チラッと見えた感じ、どうも軍人ぽかったし、傭兵でも雇わないと、無理かと思ったんだ」

それを聞いたルークは、意を決したようにガイを見上げた。

「なぁ、ガイ。ティアは、オレに色んなことを教えてくれたし、すげー守ってくれたんだ。
何とか許してもらえねぇかな」
「ルーク……」

思わず、といった感じで溢したガイは、あ、と口を押さえる。

そして、苦笑を浮かべ、敬語はしばらく見逃してくれな、と言った。

「旦那様が彼女…ティアだっけ?を生かして連れてこいと、仰ったんだ。
公爵家に侵入した挙げ句、子息を連れ去った賊を、殺すなっつったんだ。
つまり、即処刑はせずに、申し開きの場を用意してくださるってことだ。
ルークが一生懸命庇えば、処刑はないと思うぜ?」

ガイがそう言って、ルークの頭を撫でれば、ルークはパッと顔を輝かせた。

「そうか!
――っつか、子供扱いすんなっつの!」

喜んだ顔を赤くして、ふいっと逸らしながら、ガイの手を払う。

楽しそうに笑うガイと、クスクスと笑うイオンたち。

ルークはますます、拗ねるのだった。







*****アトガキ

セントビナーに入った筈ですが、話が進みませんでした…orz
ガイは、普通にアッシュの使用人もやってた筈なので、やろうと思えば、きちんと畏まれる筈。
ルークに対しては、慣れと甘えがあったのだと、推測しました。

嬉しくも、リクエストを頂けたので、番外に『ルークのお買い物』を書きたいと思います!
他にも、リクエスト募集中ですよ♪

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