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「それにしても、ライガですか。
これまた、厄介ですね」
「やっかい?何でだよ。
チーグルが、もうエンゲーブから食料盗まなきゃ良い話じゃねぇのかよ」
「えぇ。それで済む話じゃないんですよ」
ジェイドがやれやれと肩を竦める。
「何でだよ?」
ルークが首を傾げると、ティアが口を開いた。
「ライガ、特にその仔どもは、人肉を好むの。
エンゲーブを襲う可能性が考えられるわ」
「マジで!?つか、エンゲーブが襲われたら、確か、世界の食糧がマズイことになるんじゃなかったけか!?」
「えぇ、世界中に流通している食物の大半は、エンゲーブ産ですからね」
ルークが焦った声をあげると、ジェイドがそれを肯定する。
「でも、それもやっぱ、チーグルのせい…だよな」
長老は、完全に俯いてしまっている。
「ライガと、交渉しませんか?」
イオンが言った。
「何と?出て行け、と仰るのですか?」
「いえ……」
ジェイドが視線を向けると、イオンまでもが俯いてしまった。
「ですがまぁ、このままでは、そう遠くない内に、必ず人間がライガを滅ぼしに来ることも間違いありませんね」
ジェイドがそう続けると、ルークはギッとジェイドを睨んだ。
「はぁ!?だって、ライガは被害者だろ!」
「そうですね。しかし、事情を知らない大多数の人間にとってライガは、加害者になりうる存在なのです。
被害が出るより先に始末してしまえ、そう考える者が圧倒的に多いでしょう」
淡々と言われ、ルークは考え込む。
ややあって、ルークは顔を上げた。
「ライガに教えに行こう」
「何を?ルーク」
ティアが首を傾げた。
「だからさ、ここに居たら危ないって、ライガクイーンに教えに行こうぜ」
「なるほど。それでしたら、被害者であるライガが、己の預かり知らぬところで巻き込まれる可能性もなくなりますし、
ひょっとしたら、別の森に移動してくれるかも知れませんね」
納得したジェイドに、だろ?と嬉しそうに胸を張るルーク。
「ルーク、よく考え付いたわね!凄いわ!!」
「う…お、大袈裟だっつの!」
ティアがニコニコと誉めると、ルークは赤くなった顔を逸らした。
「ですが…、どうやってライガと話しましょう…?」
イオンが首を傾げ、ルークとティアは、はた、と固まった。
その様子を見ていたチーグルの長老は、では、と一匹の仔チーグルを呼び寄せた。
「この仔どもを通訳としてお貸し致そう」
鮮やかな空色のチーグルが、俯きながら前へ出てきた。
「我らは魔物であるので、ライガとは当然話が出来る。
さらに、このユリアから授かったソーサラーリングがあれば、人間とも話せる。
この仔ども――ミュウが、北の森で火事を起こしたチーグルだ。
ソーサラーリングを、この仔どもに持たせるので、連れて行ってやっては、下さらないか」
長老がソーサラーリングを、仔チーグル――ミュウと言うらしい――に渡すと、ミュウはぺこぺこと頭を下げながら言った。
「ボク、ライガさんのお家を燃やしちゃったですの。
ライガさんに謝りに行きたいんですの!
ライガさんたち、怒って当然ですの……。
それに、仲間も食べられちゃったりしたですの……。
みんな、ボクが悪いんですの!!
お願いですの、連れて行って下さいですの!」
それを、しゃがみ込んで、じっと見ていたルークは、ミュウの頭をぎゅっと押さえ付けた。
「みゅっ!?」
「ですのですの、うるせーんだよ。
ほれ、行くぞ!!」
ミュウを抱えて、ルークは立ち上がった。
「ティア、ジェイド、イオン!早いとこ行こうぜ!!」
「連れて行ってくれるですの!?
ありがとうですのー!」
「うわっ!邪魔だっつーの!!」
ミュウがぎゅうっとルークに抱き付き、ルークが慌てる声。
それを三人は、慌てて追いかけた。
*****アトガキ
タルタロスに辿り着かない…。
あと一話で行ける筈…。
チーグル族、と言うか、長老の行動は謎ですけど、ミュウは好きです。
一人で責任に押し潰されそうだったに違いない。
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[mokuji]
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