3

チーグルの巣に着いたルークらを出迎えたのは、大量のカラフルな小動物。
高い鳴き声が、樹のウロの内部に反響して、非常に騒がしい。

「うぜぇ…」

ルークが思わず呟く隣で、ティアは喜色満面の笑みを浮かべた。

(かっ…わいぃ…!!)

と、低い鳴き声が一つ聞こえて、カラフルな波がざざっと左右に割れた。
年老いたような見た目のチーグルが進み出てくる。

「お前たち、ユリアの縁者か」
「はい、僕はローレライ教団、導師イオンです。
貴方は、チーグル族の長老とお見受けしますが」
「いかにも」

長老は、ゆったりと頷いた。

ルークが長老の前にしゃがみ込んだ。

「おい、お前ら。エンゲーブで食料盗んだだろ」
「なるほど、それで我らを駆逐しに来られたのだな」
「否定はしねぇんだな」

反省の色も見られない長老の言葉に、ルークは、けっと顔を逸らす。

「しかし、何故、人間の食料に手を出す必要が?」
「確かに、この森でチーグルが飢えることは、まず有り得ないでしょうね」

イオンが首を傾げ、ジェイドが森の植生を思い出すように、ウロの入り口を振り返る。

「チーグル族を存続させるためだ」
「何か事情がありそうですね」

イオンが先を促すと、長老はチーグル族の事情を語った。

曰く、ライガの住む北の森で、仲間の仔チーグルが火事を起こしてしまい、ライガがこの森に移住してきた、と。
食料を差し出さねば、仲間がライガに喰われてしまうので、人間の村から食料を盗んでいたらしい。



ティアとジェイドは、その経緯を聞いて、深々と溜め息を吐いた。

イオンだけが、同情した顔で呟く。

「そんな、ひどい……」
「自業自得じゃねぇか」

ずばりと切り捨てて、ふん、とルークはそっぽを向く。

「ルーク……」

イオンが傷付いたような表情をする。
ルークは、それに少したじろいだが、だって、と続けた。

「だってよ、火事を起こしたのはチーグルだろ?
その火事で、ライガだって何匹か死んでんだろ?
なのに、チーグルは殺されちゃいけないって、それ、何かおかしくないか?」

その言葉に、イオンはハッと目を見開く。

「しかも、ライガってアレだろ、森ん中にいた、あの白いの」
「えぇ、アレはライガルというライガの仲間です」

ルークが上手く言えずにいると、察したジェイドがフォローを入れた。

「それそれ。あんなでけーの、チーグル一匹じゃ腹の足しにもなんねぇよ。
そんなんが、群れでこの森に来てて、マジで食料取れねぇんだったら、チーグルなんかとっくに全滅だろ」
「ふむ、確かにそうですね」

ジェイドが、顎に手を当てて頷く。

「この森にはチーグル以外にも、ライガの食料になる魔物はいますしね。
ライガは、狩りを出来ない訳でもない」
「ということは、ライガは食料に困っているから、チーグルを脅している訳ではない、と言うことね」

ジェイドが付け足し、ティアが纏める。

「ライガは単に、チーグルに反省させたかっただけなのでは?」
「なのにお前ら、食料泥棒までしやがったんだな」

ジェイドが長老を見下ろし、ルークは冷めた視線を向けた。


「なぁ、あと一個聞きてぇんだけど」
「……何だ」

少々打ちひしがれたような長老が、ルークを見た。

「チーグルはどうやって火事を起こしたんだ?」
「……我らチーグル族は、火を吹くことが出来るのでな。
火事を起こした仔チーグルは、火を吹く練習をしていたのだ」
「ふぅーん」

ルークはふむふむ、と頷いた。

「じゃ、火を吹いて狩りをすれば、人間の食料を盗む必要はなかったんじゃねぇか?」

長老は、沈黙するしかなくなってしまった。








*****アトガキ

ティアとジェイドも、自業自得だと思ってます。

原作で、イオンとティアがチーグルに同情的なのが解せません。
やっぱ小さくて可愛い、ローレライ教団の聖獣だからでしょうか。それとも、ライガと違って人間に害を為さないからでしょうか。
何れにしても、身勝手だなぁと思います。

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