1
ガタン!!
「ふがっ!?」
馬車が大きく揺れたため、ルークは目を覚ました。
正面の席で、軽く目を伏せていたティアが、ルークを心配そうに見る。
「ルーク、起きたの?もう少し、寝ていても良いわよ?
昨夜は明け方近くまで、慣れない道を歩いたんですもの、疲れてるでしょう?」
ティアの心配をよそに、ルークは大きく伸びをして、眠気を払った。
「いや、大丈夫だぜ?
結構スッキリした」
「そう?でも、無理はしないでね?」
「わーってるって!」
ルークがにっこり笑うと、ティアは口元(主に鼻)を押さえて、少し顔を背けた。
と、今度はドォン!と爆発音が聞こえた。
「なっ、何だ!?」
「あれは…!!」
一台の馬車と、それを追う小型の軍艦。
軍艦が掲げている紋章は…。
「そんな、マルクト軍!?」
「え、マジで!?じゃあ、ここはマルクト領なのか!?」
「すみません!この馬車が向かっているのって…!?」
「あ?偉大なるピオニー9世陛下のおわすグランコクマだぜ!」
窓から顔を出して、ティアが馭者に問うと、実にアッサリと返ってくる。
呆然と座席に腰掛け、ティアは頭を抱えた。
「ルーク、ごめんなさい…、本当にごめんなさい…!
私が、行き先も現在地もしっかり確認しなかったせいだわ…!!」
「何だ、お嬢さんたち?キムラスカの首都に行きたかったのか?」
「えぇ…」
「じゃあ、逆だったなぁ!
ローテルロー橋を渡らずに南下して、ケセドニアへ向かえば良かったんだ」
馭者は、そう説明し、ここで下ろそうか、と訊いた。
ティアが答えようと、口を開いた瞬間、ドドォン!!と先刻より大きな爆発音。
「なっ、何!?」
「ティア!あれだ!!」
軍艦に追い掛けられていた馬車が橋を渡っているが、その後方、橋のこちら側は壊れてしまっていて、軍艦が取り残されていた。
「あちゃ〜、橋を落とされちまったな、お嬢さん方。
どうする?イスパニア半島には戻れなさそうだが」
愕然としているティアの耳には、馭者の言葉が届いてないようで、沈黙している。
代わりにルークが答えておく。
「なぁ、オッサン。一番近い町って何処だ?」
「ぁん?エンゲーブだな」
「じゃ、そこまで」
「あいよ!」
馬車が再び走り出してしばらく、ようやくティアは復活したようだった。
*****アトガキ
漆黒の翼を追っていたのは、ジェイドではなく、セントビナー駐留軍。
そのため、「そこの辻馬車〜」は省略。
[ 7/28 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]