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霧の彼方の記憶

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おいで、と誘う声は甘かった。
差し出された手のひらを戸惑ったように見つめた私を見て、その人は僅かに首を傾げてから「ああ」と合点がいったとばかりに微笑んだ。
「警戒しているのかい?大丈夫、僕は君のお父上の友人さ」
「父上…?パパ?」
「そう。君のパパの事、良く知っているよ」
「パパのお友達…?」
友達というにはその人は随分若く見えた。見たことが無い程綺麗な顔をした、若い男の人だ。皺ひとつ無い紺地のストライプスーツを着て、滑らかな輝きを放つ革靴を履いている。
「ああ。だから知らない人ではないだろう?おいで、素敵なものを見せてあげよう」
そう言って再び差し出された手のひらは日の光の下で輝くばかりに白く、生気の無い人形のようで、私は触れるのを躊躇った。けれどその人の顔に浮かぶ微笑みがあまりに優しいものだから、どうしても気になってその手を取った。
「いい子だ」
声には笑みが滲んでいた。艶やかな紅唇が形良い弧を描く。赤い紅い、薔薇の色。風が吹いた拍子にふわりと薔薇の匂いがして、瞬く。
「あなたの、お名前は?」
見上げた先、遥か頭上でその人は私を見た。まっすぐに向けられた瞳は熟れた木苺よりも美しい、宝石みたいな赤い色をしていた。
「────リドル」



(霧の彼方の記憶/リドル/Last Note)


ヒロインとの出会いを書こうとしたけど…うーん…
しっくりこないのでひとまずこちらにアップ


 

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