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独りを選んだのは僕だ

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命は重いと言うけれど、実際に杖を振るって奪った命は羽のように軽かった。倒れた骸を眺めても何の感慨も湧かなかった。ただ「こんなものか」という少しの落胆が胸に湧き起こっただけで、それも瞬きの合間に消え去った。
「馬鹿な男だ」
身の程知らずの愚か者。自分だけ逃げ出して、何もかも投げ捨てて、こうしてのうのうと生き延びていた。恐怖に引き攣った死に顔は鏡を見るまでも無く自分と瓜二つだった。それがたまらなく腹立たしいのに見てしまう。目が逸らせない。違う、僕はあんな顔はしない。みっともなく目を見開き、恐怖を表に出すなんて。ああいっそ死よりも恐ろしい恐怖を与えてやればよかった。自ら殺してくれと懇願し、地に額をこすりつけて哀願するほどの恐怖を。けれどこれ以上見ていたくは無かった。憎くてたまらないのに哀れだった。年老いた夫婦とその息子。自分の血縁者。その目に鼻に口に髪に自分との共通点を見つける度吐き気にも似た憎悪が込み上げる。こんな繋がりはいらない。こんなものはいらない。いらない者は消してしまえばいい。記憶も形も存在すらも。僕にはその力がある。
杖を向けて言葉一つで全て奪える。抗う術を持たぬ弱い者。こんな弱さは僕には無い。僕にはいらない。僕とは結びつかない。結び付けない、きっと誰も。だから奪う。だから消す。この世のどこにも繋がりなんていらない。僕は独りで、独りなのが僕で、それが僕の理想だった。

(リドル/独りを選んだのは僕だ)

リトル・ハングルトンで父親と祖父母を殺害した時の話。父親と瓜二つなのは公式設定ですが、祖父母にも似ている部分はあったんじゃないかなーという妄想。


 

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