×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

Short Short Log

捨てられたのは僕じゃない

36/53



「違います」
俯いたまま震える唇が否定の言葉を吐き出す。
「違いますよ」
繰り返すそれはうわ言のようだった。レギュラスは虚ろな響きで幾度も言葉を繰り返す。自身に言い聞かせるように。それが真実なのだと噛みしめるように。
「あの人は僕らを省みない。あの人は僕らと同じ世界を見られない。あの人は愚かで救い様の無い人だ」
自分の居場所を自分で潰した。家も両親も兄弟さえも、あの人は自ら手放したのだ。それがどれ程愚かで馬鹿げた行為か未だ気付かずのうのうと生きている。
「異質なのはあの人の方だ。適応出来なかったのはあの人の方だ。おかしいのは僕らじゃない、あの人だ」
弾かれたのは兄の方だ、僕らは捨てられたんじゃない、捨てたのだ。捨てられたのは兄の方だと吐き出すレギュラスの表情は苦痛に歪んでいた。痛みを堪えるように唇を噛み締めて、灰色の瞳は翳って暗い。
「あの人は愚かだ」
何もわかっていない。わかろうともしない。だから弾かれたのだ。名前を消されたのだ。捨てたのは僕らで、捨てられたのは僕じゃない。そうつぶやく声がどれ程悲痛に響いているか気付いていないのはレギュラスだけで、だからこそその言葉は一層哀れに聴こえた。


(レギュラス/捨てられたのは僕じゃない)


 

  back