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つめたい鬼

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長い剣を打ち振るった後に 生きるものは何も残らない。
ぱっ と散る鮮血は静かに地面を赤に染めてゆく。一歩進む度に広がり 一面に咲く彼岸花。長い剣から払い切れなかった血がぱたぱたと乾いた音を立てて地面を叩く。吐き出す吐息に混じる鮮血があまりに濃く鮮やかで 何処か作りものめいて見える。紙のように白い肌に滲む赤は美しく幻想的ですらあった。 
赤い色。いのちの色。零れ落ちてゆく赤。
いのちを容易く奪うのに、このひとのいのちにはつながらない。他人のいのちは継ぎ足せない。他者のいのちを削り取り 自分のいのちも削り取る。
それでもきっとこのひとは微塵も後悔なんてしていないのだろう。だってこんなに美しい。

綺麗な鬼。つめたい鬼。
このひとが見据える先にはひとりしかいない。自分すらも切り捨てて、まっしろな死へと突き進む。どんなに引き留めようとしてもこの世には留められない。自分のいない未来の為に全てを投げ出し進むひと。
留めようと手を伸ばし掴んでも 綺麗な飛沫しか残さない。

(半兵衛/BASARA/つめたい鬼)


 

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