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鳥籠を壊して

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好きだよ好きだ。
誰より何より愛おしい。

君が、君だけが好きだった。誰にも渡したくなんてなくて、それがいけない事だとわかっていながら、願うままにこの手を伸ばした。君の視線の先にいるのは俺じゃなかったけれど、俺の視線の先にはいつも君がいた。
微笑みひとつで緩やかに、けれど決して振り切れない程強く俺を捕らえる君に、どうしようもなく 惹かれていった。遠ざかるアイツの背を追う視線を止めたくて、こちらを見て欲しくて。切欠なんてそんな些細なものだった。
気付けば手を伸ばしていた。細い手首は容易く掴めて、優しい君は驚き、戸惑いながらも振り返った。ぱちり と瞬く瞳にゆるく目を細めて微笑み掛けて、警戒を解いた一瞬 ぐいと力強く引き寄せた。
どうして、と瞳で訴える君の抵抗を遮るように唇を重ねて、離れようと腕の中で藻掻く肢体を強く抱き締めて、幾度も執拗に角度を変えて口付けた。必死に抵抗する君の耳元で『好きなんだ』と囁けば、優しい君は振り解けない。それを知っていた。ずっと君だけを見ていたから。その優しさを利用することに躊躇いすら生まれなかった。ただ欲しくて、手に入ることが嬉しかった。

けれど、それももう 今日で終わり。

「さよならだよ、ライム」
走って。逃げて。どうか身勝手だと思うけれど、きっとこのままだと、俺は君を壊してしまうから。大事なのに守れない。大事に扱うことが出来ない。そんなのもう、嫌なんだ。
「ほら。荷物、まとめて」
「勘、ちゃん...?」
「早く。俺の気が、変わらない内に」
「どうして?ねぇ どうしたの?何かあったの…?」
「ライム、」
「だって…だって、変だよ!わたし、わたしだって、そんなに器用じゃない!急に言われたって切り替えられない。確かに、こんな状態おかしいけど。やっと 慣れてきて…楽しいって思えてきたのに……こんな、急に、」

「錯覚だよ」

間髪入れずに跳ね除けた。ひゅ と息を呑む音がした。目を見開いて俺の顔を見ているライムは小動物みたいで、こんな時でもかわいいと思ってしまう。ああ、本当に、俺は君が。

――――でも、ダメだ。


「全部、錯覚だよ。ライムが俺を好きだと思うのも、今が楽しいって思うのも、このままでもいいかもしれないって思い始めたことも、何もかも。君は俺を恐がっていたし、今でもどこか恐ろしいと思っているはずだ。それに気が付かないのは、今この状況があまりに異常だから、麻痺しているだけだ」
「そんなの、」
「今はわからなくても、きっと落ち着いて考えたらわかるはずだよ。だって、君が好きなのは、俺じゃない。……俺じゃないんだ」
「かん、ちゃん…」
「ごめん。こんなの、俺が言えた事じゃ無いのに。わかっているんだ。でも、俺、これ以上一緒にいたら 本当にライムを手放せなくなる。壊してでも、ずっとそばに置きたくなるから、だから、」

「―――逃げて」

「遠くに。手を伸ばしても、届かないくらい遠くへ。君が本当に好きな奴のところに」
「そしてどうか、しあわせになって、ライム。お願いだから、俺から逃げて」
好きな人。誰より何より大切で、出来る事ならずっとこの手で守っていきたかった。
君が、君だけが好きなんだ。
だけど君が、ライムが好きなのは、俺じゃない。それを知ってて利用したのは俺だけど、やっぱり俺には二人とも大事で、大切な友達で、しあわせになって欲しくて。
こんな単純なことに、気が付くのが遅すぎた。けど、今ならまだ間に合う気がするんだ。
―――だから、お願い。

「俺から逃げて」



(勘右衛門/rkrn/鳥籠を壊して)
ヤンデレを書こうとして撃沈

 

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