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完璧しか欲しくない

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重苦しい感情は胸を圧迫し腹へ溜まる。鉛のように。
それを吐き出したくてたまらないのに、幾ら口を開いて嘔吐いても、ひとかけらも出てこない。吐き出されるのは別の感情で、取り繕うまでもなく、言葉は勝手に優しげな響きとともに滑り出す。相手は笑う。嬉しそうに。
違う、違う。僕はこんなの望んでいない。僕は全てを壊してしまいたい。僕は何もかもが憎かった。何もかも壊してなくしてしまいたかった。けれどそれは無理だと知っていた。トム・リドルには無理だった。トム・リドルは半純血だ。マグルでも無いが、純血でも無い。半端な存在。
こんなに全てが揃っているのに、ただ血だけが僕を裏切る。僕は完璧になりたかった。僕は完璧でなければならなかった。僕は完璧になれなかった。
だから捨てた。名前も顔も過去も全て。完璧になれないのなら、全て捨てて作り変えてしまえばいい。
さようなら、トム・リドル。君は僕だった。僕は君が嫌いだった。完璧になれないトム・リドルなんて、他の誰が求めても、僕には必要無かったんだ。
僕は僕自身さえ脱ぎ捨てて、完璧な私になると決めたんだ。

(リドル/完璧しか欲しくない)


 

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