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近くて遠いひと

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居心地良さそうな木陰で太い木の幹に背をもたせて読者しているリドルを見つけて、私はまっすぐにそこへ向かった。
リドルの足元へ来ると、何も言わずにドサリと青々とした草原に仰向けに倒れた。その衝撃で短い芝が空を舞う。
リドルはそんな私を一瞥しただけで何も言わず、静かに本のページをめくった。はらり と乾いた紙が擦れる音が一定の感覚で響くのを聴きながら、私は目を閉じた。ゆるやかに吹く風が長い髪を揺らして閉じた目蓋を覆う。
そっと目を開けてリドルを見ると、目線は相変わらず手元の本を追っている。何の本を読んでいるのかと背表紙をみれば、何やら小難しいタイトルが書かれていて 途端に興味を失くした。

はらり はらり

音はペースを崩さず続いていく。
リドルは私に興味を示さない。けれど遠ざけることもしない。その理由を知りたいとは思うけれど、知ったら何かが壊れてしまうのだろうということもわかっていた。だから聞かない。今はまだ。

この静寂が永遠に続けばいいのにと思った。


(リドル/近くて遠いひと)

 

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