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01 Let's☆Go!!


「入れば?」

カチャリと部屋の扉を開けば奥は畳部屋で和を基調とした部屋にテーブルが一つとテレビが置かれ、手前はフローリング床で低めのマットレスベットが一つ置かれている。和と洋のミックス、最近はこういうのが流行っているらしい、俺としては普通の和室の方が落ち着くのだがまぁそれはいい。
ここは俺が泊まるはずの部屋で、だからベットは一つ。なんも問題もない、はずだった。
だけど今この入り口には俺ともう一人あわせて二人。

「うおっ!お前一人部屋アルか」

そういうのは万事屋のチャイナ。
今日は真選組の1泊2日の温泉旅行の日。なぜチャイナまで付いてきているのかといえば、近藤さんが万事屋のメガネの姐さんを連れ出したかったからという単純な理由。そんなこんなで万事屋とその姉が一緒に来ることになったのだ。

そしてここにチャイナが居るのは俺とチャイナがいい感じになっているとかそういうコトじゃなかった。
…残念ながら。

「まー一応、オマケで付いてきたお前らとは違うんでィ」
「ちょ!露天風呂まで付いてるネ!いいなーいいなー」

そういって部屋の一番奥に掛けていき、テラスにある露天風呂を窓越しにへばり付いて見ていたチャイナ。しばらくそうしているのかと思えば不審な顔でこちらに向いた。

「…お前どういうつもりアルか」
「は?」
「…私に何かするつもりアルか」

ついでに言っておくが俺が無理矢理連れ込んだ、とかそんなんではない。
俺は宴会場で飲んだくれて爆睡、チャイナはジュースしか飲んでいないはずなのに爆睡。んで仲居さんに起こされて起きてみればみんな撤収してたっていうなんともマヌケなオチだった。チャイナは姐さんと相部屋でその姐さんは部屋に鍵をかけて既に寝てしまっていたという。
それでいくらチャイナでも廊下で寝ろっつうのもアレなので部屋まで連れてきてしまったワケだけど。ソレが良心なのか下心なのかは…気にしないほうがいい。

「は?ねーよ」

でも、もしかし…。

「絶対だな、絶対ちゅーとかするんじゃネーヨ」

あぶねぇ。もしかしたら、なんて考えは甘かった。
何、ちゅーって。
もしここで、もしかしてが起こって俺が雰囲気に酔ってちゅーとかしてみろ、ムカツク感じで『お前私のこと好きアルか』とか絶対に言うに決まってる。コイツはそういう奴だ。そんなことしたら俺の負けじゃねーか。
いやほんとにあぶねぇ。

「ありえねェし」
「そんなのわかんないネ、銀ちゃんが男はみんなオオカミだって言ってたネ」
「それは相手が『女』だった場合だろ、チャイナはどーみても鼻水垂れたクソガキだし」
「オイィィ!失礼にも程があるんじゃないアルか?!」
「事実だろィ、つーか何?お前俺に何かされたいワケ?」
「な!ん、んなワケないアルッ」

売り言葉に買い言葉で言ってしまったけども。そう言った後のチャイナは慌てていて、少し顔が赤らんで…いるような気がする。
んんん?
逆に考えてみろ、コイツからちゅーとかそんな単語が出てきたってことは俺の事そんな感じに意識していた…とか?『別にあんたの事なんてどうでもいいんだけど!…だけど…』的なツンデレだった…とか?そもそも最初の時点で何かするつもりじゃないかと聞いてきたのは、何かしてほしいからなのか?
…わからない。コイツの考える事は全く読めない。
分かることは俺がそろそろ限界だってこと。

「…ふーん、その割りには顔が赤いけど?」
「き、気のせいアル!ちょっとまだ酔ってるネ!!」

いや、アンタが飲んでいたのはジュースだけど。果汁10%未満のオレンジジュースだけど。
やっぱり、っていうか絶対誘ってるだろコレ。

「そんなにちゅーしたかったら、してやってもいいんだぜィ」
「だ、誰がお前と!あり得ない、あり得ないネッッ!!」

うん、もう駄目。
誘ってるとか誘われてるとか、俺に最初から下心があったとかなかったとか、考えるの面倒になった。
息を切らし顔を真っ赤にしてそういい終えたチャイナと俺の距離は1メートルほど。一歩踏み出せば簡単に縮まって、細い腕を掴めば抵抗することなく簡単に引き寄せることができた。
それまであんなに元気だったチャイナは一言も言葉を発しない。背中に手を回しても騒ぎ出す様子は全く無くて。

「やっぱり…ちゅーしたかったんじゃねェかよ」
「う、うそアル、そ、や、やっぱ…」

腕の中で小さく固まってたチャイナがふるふると震えたけどさっきほどの元気は全くなくて。ぎゅっと抱きしめたらその強張っていた体の力がふっと抜けた。そして俺に身を預けるようにもたれかかってくるのを更に強く抱きしめるとドキドキと心臓の音だけが伝わってくる。
…だけどそれ以上に俺がドキドキしている、なんて気づかれたくない。

「はい、時間切れ」
「ちょ、ま、待つッ…」
「うるせェ、黙れ」

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