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02 夏の恋は


本当に蒸し暑い日だった。
無計画に家を飛び出てきたことを少し後悔した。かぶき町は人口の多さ、密集さも手伝ってさらに蒸し暑く感じる。 こんな日は大人しくドラマの再放送を見るのが正解だったかもしれない。そういえばあのドラマ今日最終回じゃなかったっけ。ビデオもセットしておくの忘れたし。あー最悪。

すべては空を覆い尽くしている分厚い雲の所為だ。傘なしで歩けるのはとても楽だけど、雲の重みが不快で仕方ない。

「はぁ…これじゃぁ不快指数120%アルな」
「大人なんてキライアル」

溜息のようにでるひとり言と共に思い出すのは先程の万事屋での会話。
本気で言ったわけではなかったけど、子供ながらにちょっと危ない道にも進んでみたいという気持ちは少なからずあるというものだ。
それを頭ごなしに否定されては、ちょっとムカっとする。 どうせあの天パからすれば自分なんていくら背伸びしても子供なんだ。 それに加えて今日は駄メガネにまでバカにされた。童貞のくせに生意気な奴め。

「あっつい…」

ベタベタ纏わりつく汗が気持ち悪い。 早く公園にでもいってベンチでごろごろしよう。 そう思った矢先、視界の先に人だかりが出来ていた。
何かの事件でも起こったのだろうか、立ち入り禁止のテープが張り巡らされていた。そしてその周りを囲むように停車している真選組の車。
嫌なものを見てしまった。 こんなとこで奴には会いたくない。更に不快感が増すだろうが。
さっさと場所移動しよう。そうだ、河原のほうに行こう。あそこなら駄菓子屋もあるし、うんそうしよう。 踵を返し来た道を戻ろうとしたがその瞬間視界が真っ暗に閉ざされた…訳ではなくて。

「こんなところで何やってんでィ」

正しくは黒い服を着た奴が目の前に居た。 こんな日に会いたくない奴ナンバーワン。 いや会いたい日なんて一日たりともないけれど。 ほんと今日はついていない。

「おまえこそ神楽様の背後をとるなんていい度胸してんナ」
「たまたま俺の行く先にテメエがいただけでさァ。ガキがウロウロしてんじゃねーよ、危ないぜィ」
「ガキにガキって言われたくないアルな。さっさと退くヨロシ」
「てめえがどきな」

予想通りに目の前の黒い服が絡んでくる。いつもなら買ってやる喧嘩だが、残念ながら今日はそういう気分ではないのだ。

「あらら、今日はおとなしいじゃねーですかィ?もしかしてアノ日?」
「…っざけんなヨ!!このセクハラ警官が」
「違うのかィ」
「黙れ」
「しかし今日は暑くてたまんねーや」

懲りずに絡んでくるサドヤローは全身黒ずくめで見ているだけでも暑苦しい。 早く視界から消えろ。そう思いながら溜息を吐いた。
こんなクソ暑い日にそんな格好でいるのが悪い。その反面今日の私はノースリーブのスリット入りのチャイナ服。クーラーのない万事屋では薄着になることが暑さを凌ぐ一番の有効手段だ。クールビズ万歳。
そして私のため息につられたのか目の前の黒ずくめサドヤローも息つき口を開く。

「チャイナは良いよなー、涼しそうな服で」
「今日は悩殺スリットネ、うらやましいダロ?」
「誰がガキのスリットで悩殺されるんでィ。あ、ロリコン?」
「誰がロリコンアルか!まぁオマエにはこの良さが分からないアルな〜ガキアルな〜」
「つうかそれが分かるのがロリコンでさァ、夜道には気をつけることだな」
「お前もナ。それよりちゃんと仕事しろヨ。いつになったらあそこの道とおれるようになるアルか?通行妨害もいいとこアルな」
指差す先はまだ人だかりの山だった。 むしろ先程よりも騒がしくなっている気がする。
「あ〜あそこは暫くダメだぜぃ。結構派手にやらかしちまったんでねィ」
「ふーん、じゃぁおまえはさっさと仕事に戻るヨロシ」
「なんでチャイナにそんなこと言われないといけねーんだよ。俺の仕事はもう終わりましたー。事後処理は専門分野の人に任せておけばいいんでィ」

最後に、土方の目がないうちにさっさと消えねーとな、とボソっと言ったのを聞き逃さなかった。 ここにはいないトッシーに同情してしまう。

「ところでチャイナはこれからどうするんで?」

は? これから? いやこれからもなにも今現在進行形で散歩の途中ですが。それを邪魔されてめっさ気分悪いんですが。
そんなことを思っているとヤツから信じられない台詞が。

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