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04 君と僕の絶対領域


「沖田君との補習は楽しかった?」

晩御飯のお茶漬けをすすりながら銀八はいう。晩御飯は当番制にしていて今日は神楽の担当の日だった。料理が出来ない訳じゃなかったけど神楽はこれが好きだった、あと卵かけごはんもすきだ、つーか米が好きだ。

「別にー。一人の方が気が楽ネ」
「その割にはこのプリント正解率高かったけど」
「それは…そーゆー時もあるネ!」

それは、沖田にプリントを見せてもらったから。でも代わりにアイスを奢れとかいう奴だから全然嬉しくもなんともない。

「それにしてもアイツはアホアルな。補習なんて全然楽しくないのに」
「それが男心って奴だよ、神楽。分かってやれ」
「…わかんねーヨ」

神楽がズルズルとお茶漬けを5杯ほど食べ終えると、銀八が思い出したように言う。

「あ、そうだ。来月兄貴がこっちに来るってよ」
「…マジでか」
「神楽が全然帰ってこないから、俺が行ってやるって」
「余計なお世話アル。バカ兄貴が。…銀ちゃん家に泊るアルか?」
「まーそうなるだろうなぁ。ちと狭くなるが、仕方ねえなー」

本当にそうなるとかなり面倒だ。なんていうかDV?ドメスティッスヴァイオレンス的な?殴り愛みたいな?シスコンみたいな?とりあえず面倒くさい。なにかにつけて口を挟んでくる兄貴が神楽は鬱陶しくて嫌だった。それが嫌で、留学の話があったときに飛びついたという事は誰にも言っていない。その兄貴がこっちに来るなんてため息を吐かざるを得ない。

「狭いのも嫌だけど寒いのも嫌アル」
「なにそれ」
「冷暖房くらいは完備しろヨ、金欠男が。こたつのひとつやふたつないなんて、ダメ男ネ。あの沖田でさえこたつ出してるアル、…あ、兄貴が来てる時沖田ん家に泊まりに行こうかなー」

冷蔵庫にたくさん食料入ってるしー、奴は一人暮らしで広い家を持て余してるちょっとくらい部屋は余ってるだろう。我ながら名案なんではないだろうか。

「ちょちょちょちょッッ!何言ってるの神楽ちゃん!!なに?!泊りに行くって!!そもそもなんで沖田君家がこたつだしてるの知ってるの?!許しません!これは教師として、兄の友達として、そして父親としていうんだからな!!絶対許しませんッッ!」
「父親じゃねーダロ。オヤジはあのハゲだけで十分アル」
「いや、そんなことはどうでも良くて!神楽ッ!沖田君家に遊びに行ってるの?…まさかね?」
「行ってるアルそれが何か?」

部活をしていない神楽はたびたび沖田の部屋に遊びに行っていた。遊びにと言ってもマンガ読んだりゲームしたり、お菓子を奪い取ったりしてるだけだ。
やましいことなんてして…いない。さっきみたいにふざけて一方的にちゅーされたりすることもあるけど別にそれ以上はなにもない。決してなにもない。

「なにがァァそれがなにか?だッ!なに?お前ら付き合ってたの?沖田君の一方的なアレじゃなくてお前ら付き合ってたの?!みんな噂してるけど付き合ってたのッッ?!」
「銀ちゃんうるさい。そんな噂知らないし、付き合ってもないアル。冗談は死んでから言えヨ。金欠天パ」

まくしたてて言う銀八を煩く思った神楽は、適当に聞き流して席を立った。
***********

「ふぅ〜生き返るアルな〜」

煩い銀八から逃げるように、神楽は風呂に入った。狭いながらもなかなか落ち着ける、お気に入りの場所だ。
《知ってるか?俺ら付き合ってるらしいぜ》
《…じゃなくてお前ら付き合ってたの?》
あれ?銀ちゃんその前に何て言ってたんだっけ?なんか重要な事だった気がするけど。 まあ置いといて、二人とも合わせたようになんなんだろうか。

「知らない訳ないダロ」

もちろんその噂は知っていた。沖田は顔のせいか結構女子人気があるらしく、その噂を聞き付けたどこの誰かも分からないような女子に呼び出される事がしばしばあった。しかし付き合ってる事実はないので「付き合ってないアル」としか言いようがない。
みんなアイツの本性を知らないのだ。口が悪くてすぐ手がでるし、セクハラだし、なにかと上から目線でムカつく事この上ない。そして一番腹立たしいのは外面が良いこと。違うクラスの女子と話しているのを見るが、別人と言っていいくらいの爽やかな笑顔を振りまいていて正直気持ち悪い。ドエスの癖に。

「っとに良い迷惑アル」

でも振り払えない。 どうしてこんな関係になってしまったんだろう。

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