「マットの告白」-2P
「僕は18才になったらこんな退屈な町、すぐに出て行ってやるんだ」
振り向かず、接近した気配を察して言葉を発したメロに、マットは黙った
「そっか…どこへ行くんだ?」
「ニューヨーク」
彼が先にこの地を去りアメリカへ行ってしまえば、あと一年施設に縛られる自分とは連絡を絶つかもしれない
メロの存在自体が、いつだって気を抜けばその姿を見失ってしまう儚(ハカナ)い幻想のようでもあるのだ
「ニューヨークか……俺も行こうかな」
マットは隣にいるメロを見ずにポツリと呟いた
「お前には合っているかもな」
俺に合っている…?
「あそこは町全体がゲームみたいなものだし」
違うよ、そういう理由じゃない
「退屈はしないだろうさ」
俺が行くって言ったのは、お前が―
「好きだからだよ」
前を向いたままマットは告げた
「ニューヨークが?ふーん、初耳だな」
メロも前方を捉えたまま退屈そうな顔で返した
「違う、お前が」
「ふーん…… … え?」
メロは初めて隣のマットを見やった
「好きだから、俺」
「何…」
「Lと競う気はないけどマジで好きだから。お前と一緒にいたい」
メロの顔を見ようとしないマットの横顔は、けれども真剣だった
「は…」
ぽかんとしている前でマットは防護壁でもあるゴーグルを外し、彼と瞳を合わせた
ゴーグルを介さずに見るメロは細部まで色彩豊かで、思わず手を伸ばさずにはいられなかった
「きれいな目をしてるんだな」
「おまえ、何言っ―」
マットは言いかけたメロの寒そうな唇を、自分の唇で塞いだ
そのキスの長さは、マットの積年の想いの表れだった
いつの間にか周りからロジャーと子供たちはいなくなり、その場には二人だけになっていた
「―ごめん、Lに怒られるな」
キスの最中、時が止まったかのように目を開いたままで抵抗もしなかったメロに、マットは苦笑いして謝った
メロはLの名前を聞いて目覚めたように状況を把握しようと何度か瞬きをし、複雑な顔をしたあとそのままうつむいて黙り込んでしまった
やはり図星だったのか
「メロ、俺―」
「いい。行くぞ」
何か言おうとしたマットの声を掻き消すようにして、メロは歩き出した
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