Novel
男と少女の出会いと再会

 私を狙った弾丸は当たらなかった。

 当主様が引き金を引く直前に現れた誰かが、その腕を強くつかんで狙いを上へ変えたのだ。

 知らない人だった。その人はここまで走って来たらしく、かなり息を切らしていた。

「な、何だ貴様は!」
「俺は……」

 ようやく呼吸を整えて、男の人は名乗る。

「憲兵団ストヘス区支部隊長、ナイル・ドークだ!」

 力強い声で名乗った憲兵さんを当主様は突き飛ばす。

「無礼者! 憲兵ごときが許可もなく私の屋敷へ踏み込むとは何事だ! 私が誰かわかっているのか!?」
「わかっている、だからどうした! 《銃器狂いのゲデヒトニス》、またの名を《王の火薬庫》!」

 憲兵さんは続けて叫んだ。

「この死んでいる男は《ストヘス区の悪魔》だ! あの連続殺人鬼なんだよ!」

 そして私を指差した。

「よって、こいつがやったことは正当防衛に値する! お前に裁く権利はない!」
「《ストヘス区の悪魔》だと……?」

 信じられないというように当主様が首を振る。

「馬鹿な! 何を言っている! そんなもの……証拠を出せ! 証拠がないだろう!」
「やっと掴んだ目撃証言の顔と一致してんだよ! ゲデヒトニス家の人間だからってノーマークしていた部下を叱り飛ばして、駆けつければ銃声は聞こえるわこの有様だ! 大体なあ、この子供を見れば間違いねえだろ!? 何でこいつはこんなにぼろぼろなんだよ! 名高いゲデヒトニス家当主の趣味は虐待か!?」
「ふざけるな! 口を慎め!」

 ぎり、と歯噛みして当主様が背を向けた。

「このことを表へ出すなよ、《ストヘス区の悪魔》を雇い、惨劇に助力したと王に知られたら……! ゲデヒトニス家は特権も領地も剥奪される!」
「家のことより心配することがあるだろうが!」
「金ならいくらでも積んでやるからさっさと出て行け!」
「そうじゃねえだろ! この子供は――」
「この家は無関係だ! 憲兵、死体を連れてさっさと出て行け! ――いや、貴様らの手際では信用ならん。こちらが手配した者が憲兵団へ運ばせる。貴様はこの小娘を連れて消え失せろ!」

 当主様は私を見下ろす。これ以上ないくらいに冷たい視線が投げつけられた。

「いいか、この家で起きたことは他言するなよ。――わかったか!?」

 その時、そばにある扉が開いた。

「父上、夜中に何の騒ぎですか」

 アルト様だ。暗い闇の中でも流れるような金髪が輝くようだった。
 眠たげだった瞳で憲兵の人を見て、わけがわからないというように眉を寄せる。次に私へ視線を向けて、驚いたように目を丸くした。

「リーベ? 一体何が――」

 アルト様がそばへ来て、私の乱れた髪に触れようとした時、

「アルト、部屋へ戻れ! その小娘から離れろ!」

 銃口が私たち――正確には再び私へ向けられて、二人で凍り付く。

「危ねえ!」

 血相を変えた憲兵さんがアルト様と私を突き飛ばした瞬間、引き金は引かれた。

「おい、殺す気か!?」

 弾丸は憲兵さんを掠めたらしく、その頬に血が伝う。

「貴様が勝手に銃の前へ出て来たんだ、私は間違っていない! そもそも息子に当てるはずがないだろう!」

 当主様の叫びを聞きながら私は何とか起き上がる。

「う……」

 背中を打ち付けた痛みに呻きつつ、同じく突き飛ばされた隣のアルト様を見れば昏倒していた。床に頭を打ったらしい。
 起き上がれないアルト様を見て当主様は怒り狂う。

「憲兵、よくも私の息子を!」
「お前が銃向けて撃ったからだろうが!」
「もうさっさと出て行けっ、貴様もだリーベ!」

 その時、手首に痛みが走った。誰かが私の手をつかんだのだ。はっと視線を向ければ、意識が朦朧としているアルト様だった。

「だめだ……リーベ……」

 私は混乱した。力の入らない手で、どうして私を引き留めてくれるのか。

 ああ、そうか。――この人は『何も知らない』からだ。

 その時、憲兵さんが私を担ぎ上げた。私とアルト様の手は離れる。

「出て行ってやるよ、お前なんかに殺される前に!」
「言ったな!?」

 駆ける憲兵さんが屋敷から外へ出る直前、再び銃声が聞こえた。そして次の瞬間、抱えられていたはずの私は夜空の下に投げ出される。
 全身へ走る衝撃にうずくまっているうちに背後で扉がけたたましく閉められた。
 同時に門の外から二人の兵士が駆け寄って来た。そして私のそばを通り抜ける。

「ドーク支部隊長!?」
「大丈夫ですか! 傷を見せて下さいっ」

 見れば私を助けてくれた憲兵さんが倒れていた。足から血が流れている。

「かすめただけだ、騒ぐな」

 脂汗を滲ませながら憲兵さんが応じたその時、強い冬の風が吹いて、私は自分が夜着しか身につけていないことに気づく。靴も履いていない。

 でも、そんなことはどうでも良かった。

「お、おい、俺たちどうすりゃいいんだ?」
「ドーク支部隊長に従うまでだ。指示を待とう」

 周りには憲兵さんが何人かいたけれどそんなことは関係ない。

 誰も私を見ていない。誰も私を顧みない。誰も、私を――。

「う……」

 私はこんなにもひとりきりだ。どうしようもないほどに。

「私、は……」

 冬だった。真夜中だった。

 白い吐息と共に、私は立ち尽くす。

 何も、考えられない。

 ただ、とても寒かった。

「…………」

 冷たい風がまた吹き抜けて、そこで意識が途切れた。




「マリー! 起きてくれ、頼みがある!」

 憲兵さんの声で意識が浮上する。
 気づけば薄い夜着の上に毛布でぐるぐるに巻かれていた。助けてくれた憲兵さんに抱えられているかと思えば、その人は私を女性に託すとどこかへ行ってしまう。

 私は女性の手で全身のあちこちにある傷や痣をやさしく手当てされた。熱い湯で濡らした布で顔や身体の汚れを拭われる。薬を塗られたり包帯を巻いてもらうのに身を任せた。
 血などで汚れた夜着を脱いで清潔な衣服に着替えさせてもらうと、張り詰めていた自分の心が緩むのがわかった。

 やがて女の人が部屋から出て、私はひとりになる。炎の爆ぜる暖炉の前で丸くなった。

「…………」

 夢を見ていたのだろうかと思う。悪夢を。

 そんなはずはない、現実だとわかっているのに。
 こんなにも痛みが心と身体を満たしているのに。

「ふ……」

 自分の身体をぎゅっと抱きしめる。何に対して私はこんなに震えているのだろう。

 考えると私は――たくさんのことが、恐ろしかった。

 強く目を閉じていると、扉をノックされた。

「ほら、茶だ。飲め」

 憲兵さんだった。簡素な服に着替えている。頬には大きな絆創膏が貼られていた。普通に歩いている様子なので、足の怪我も大したものではなかったらしい。

 私は差し出されたカップを受け取ろうとして、自分の両手がまだ震えていることに気づいた。それは憲兵さんにもわかったらしく、カップは一度机の上に置かれた。

「マリーの見立てだと骨折はないし内臓も痛めていない。外傷は多いが、時間が経てばどれもちゃんと治る。急を要することはねえから医者に診せるのは明日にするぞ」

 先ほどの女性、つまりマリーさんは何者だろうと思っていると憲兵さんが続けた。

「あとは手首を脱臼していたそうだから位置を戻したらしい。……あの状況で銃を、それも初めて扱ったなら無理もねえ。脇の締め方も知らずに撃っただろうしな」

 アルト様に手を掴まれた時に痛んだ理由に納得していると、

「そういえばまだお前にはちゃんと言ってなかったな。――俺は憲兵団ストヘス区支部隊長ナイル・ドークだ」
「……ナイル、さん……?」
「ああそうだ。お前の名前は?」

 私は一瞬躊躇って、名乗った。

「リーベか。良い名前だな」
「…………」

 よみがえるのは悪魔の言葉。

『愛も名前も与えられずに生まれた、それがお前の真実だ!』

 ならばこの名前は誰が付けたのだろう?

 考えても無駄なことに頭を振って、私は訊ねることにした。

「あの……大丈夫、ですか」
「俺が? 何でだよ」
「ご存知の通り、その……ゲデヒトニス家は《王の火薬庫》、つまり王家と浅からぬ繋がりがあります。表向きは他の貴族家と変わりませんが、歴代の当主様たちの趣味である銃器蒐集が高じた結果、特に武装面で優遇されるようになりました。なので、その当主様を相手取った憲兵さん……ナイルさんのことをもしかしたら……」

 私の言わんとしていることを理解してくれたのか、ナイルさんは一度うなずいた。

「あー、だな。ろくでもねえ目に遭わされる可能性はある。だが今回に限っては大丈夫だろ」

 ナイルさんはカップを傾ける。

「結果的にあの家は図らずも猟奇殺人鬼を匿っていたんだ。お互い様ってことにして終わらせたいだろうよ。……それよりお前は自分の心配をしておけ。骨折や後遺症のある怪我じゃなくても割と重症なんだからな」

 その言葉に、

「自分の、心配……?」

 私は思わず首を傾げた。

「おう、自分を大事にするんだ」
「…………」

 そんな資格も、権利も、理由も、この私にあるのだろうか。

「……ナイルさん」
「ん? 何だ?」

 私は話すことにした。

「ご存知でしたか、《ストヘス区の悪魔》は決して無差別に子供を手にかけていたわけではないんです」
「は? どういうことだ」
「彼が狙っていたのは死ぬべき子供です。つまり……死を望まれた、生まれるべきではなかった子供」

 目を伏せて、私は続ける。

「私を産んだ女の人は……私を殺そうとしていたのに殺す前に死んで、私を産ませた男の人はそんな私を殺す直前に捕まって自殺したそうです。私が最初から生まれることなく死んでいれば、少なくとも――」
「ま、待て! 待て待て待て!」

 ナイルさんが咳き込んで慌てたように、

「お前、何言ってんだっ?」
「過去に起きた真相と、起こるべきだった事実です」

 淡々と話して、私は気づく。

 こんなことは誰かに話すようなものではない。現に、目の前にいるこの人はとても困っている。

「ええと、あの、とにかく、色々とありがとうございました」

 頭を下げて誤魔化せば、ナイルさんはがしがしと頭を掻いた。

「――いや、礼はいらねえよ。壁の中の秩序を守ることが憲兵団の仕事だからな」

 私がうつむいていると、ナイルさんは続けて言った。

「ところでリーベ。――どうする、これから」
「…………」

 私が聞きたい。

 どうしよう、これから。

 身寄りなんてものはない。両親も家族も知らず私はずっと、ゲデヒトニス家で育ってきたのだ。

『あの医者の言葉を信じた私が愚かだった……!』

 投げつけられた言葉を推測するに、どこかのお医者様のおかげで私はずっとゲデヒトニス家にいられたのだろう。《悪魔》も『医者』の言葉を使っていたし、私を助けたのもそのお医者様なのかもしれない。どこの誰かは、知らないけれど。
 とにかく開拓地へ行って、働くことしか選択はないだろう。

 他には、何も――いや、他にもある。

 唐突に私は気づいた。

 守って、喪って――得たものもある。

「私は……」
「あー、身寄りがねえなら、その、あれだ。この家で暮らすか? お前、使用人だったんだろ? 家の用事でもやってくれたら助かるし、小娘一人くらいの面倒なら――」
「戦います」
「……は?」
「私、兵士になります」

 私の言葉に、ナイルさんは目を見開いてしばらく何も言わなかった。

「訓練兵になれるのは十二歳からだ。お前にはまだ早い」
「私、十二歳ですけれど」
「えっ?」

 ナイルさんは驚いたように目を丸くして、何度か瞬いてから、

「だがな、お前みたいなガキは通過儀礼で――いや、違うな」

 私の目を見てナイルさんは言い直す。どこか諦めたような、同時に哀れむような口調で。

「お前に通過儀礼は、もう必要ねえな」




 数日後。入団手続きはナイルさんがすべて行ってくれた。

「今期訓練兵志願者受付締切まであと五分ですよナイルさん! 早く早く!」
「わかってるから急かすな! お前の志願書を書いてるんだよ! お前の戸籍資料、ほとんど白紙なんだぞっ? え、名字もない!?」

 ナイルさんが目を丸くして、私はひとつ閃いた。

「ええ、なので私に名字を付けて下さい」
「は? 名字を付ける?」

 ナイルさんは首を傾げた。

「何でも構いません。リーベ……この名前だって、どこの誰が何を思って付けたか知れないんですから」

 私をこの世へ産んだ人たちから贈られたのは『殺意』だけだ。

「とは言ってもなあ……普通わざわざ考えるもんじゃねえだろ、名字なんざ」

 時計を見て私は焦る。時間がない。

「何でも良いって言ってるじゃないですか! さっさと付けて下さいよ!」
「わかったわかった! ったく、自分のガキの名前は考えても名字なんざ――」
「早く! 三分前!」
「ああもう!」

 ナイルさんが本棚から適当に一冊を引っ張り出した。

「この本の著者の名字……ファルケだ! これでいいか!? 申請しておくからなっ?」

 こうして私は訓練兵団へ入団することが決まった。

「ナイルさん、お世話になりました」

 私が頭を下げれば、ナイルさんはひらひらと手を振る。

「あー、別に構わねえよ。それよりお前、何かあったら俺を頼れよ。憲兵団のナイル・ドークだ」
「ありがとうございます」
「――じゃあな、リーベ・ファルケ」

 ナイルさんが立ち去って、私は深呼吸をする。そして空の青さを少し眺めてから訓練兵団の門をくぐった。




 再会は約三年後、解散式直前の夜だった。ナイルさんが私を訪ねて来たのだ。

「お久しぶりです、ドーク支部隊長。――いえ、あれから憲兵団師団長になられたそうですね。おめでとうございます」

 私が右手の拳を胸へ当てた敬礼を見せれば、軽く手を振ってあしらわれた。

「まあな。だが別に堅苦しいのは気にするな。好きに呼べばいい」

 そしてナイルさんは一枚の紙を取り出した。

「リーベ・ファルケ、これが何かわかるか?」
「……どうしてナイルさんがそれを持っているのかはわかりません」
「俺が憲兵団トップだからだよ」

 ナイルさんは続けた。

「兵站行進が七番、馬術が十五番、対人格闘術が二番、射撃が一番、兵法講義が九番、技巧術が十三番、立体機動が二十一番……そして総合成績は十六番」

 私の成績が書かれた紙をナイルさんが指先で弾く。

「まずまずの成績だが、最も点数の高い立体機動が足を引っ張ったな。これがもう少し上の順位なら文句なしに十番内に入った」

 その言葉に私は首を振る。

「充分な成績ですよ。元々、憲兵団に行くつもりはありませんでしたし――」
「まあ聞け、いいか?」

 ナイルさんが成績開示用紙の一ヶ所を指差した。

「射撃一番。この成績で俺はお前を憲兵団へ呼べる。俺だけじゃねえ。滅多にない腕前に憲兵団幹部から何人もお前に推薦がかかってるんだ! 本部じゃちょっとした有名人だぞ。特にあれだ。一発の弾丸で同期100人を地に伏せさせたって話。俺は時間が合わなくて中央憲兵の連中しか視察へ行けなかったんだが、あれはどうやったんだ?」
「あれは――いえ、せっかくのお話ですけれど憲兵団には行きませんから」
「内地で暮らせる特権階級だ、マリーもお前に会いたがっていたし喜ぶぞ」
「……ナイルさん、あの」
「憲兵団じゃもう噂になって、そんなヤツが本当にいるのかいないのか賭けになっている。その正体を把握しているのは憲兵団幹部と訓練兵団幹部だけだ。正確に言えばもちろん東方訓練兵団のお前の同期たちも知っているが、雪山訓練名物の大熊《山の覇者》を討ち取った騒ぎもあって全員見事に箝口令に従っているしな。あのエルヴィンの知らないことを俺が知っていると思ったら!」

 エルヴィンとは誰だろう、と少し考えて思い出す。確か今の調査兵団トップの名前だ。口ぶりからすると親しいのだろうか。
 あとさっき話していた『中央憲兵』とは何だろう。憲兵団と何か違いがあるのかわからない。

 私の疑問を余所に、ナイルさんはひとしきり笑ってから続けた。

「あとは大層な異名も持ってるらしいじゃねえか。確か《硝煙の悪魔》だったか」

 その言葉に――私は嗤う。

「不思議なものですね、あの男を殺した私がまるで名を継いだように《悪魔》と冠されて。何も知らない同期が戯れに付けただけなのに。これが人の世、因果というものですか。――え、ナイルさん!?」

 突然、ナイルさんが机へぶつけんばかりに深く頭を下げたので私は驚いて叫んだ。

「ど、どうしたんですか?」
「悪かった。気軽に呼んで良い名前じゃなかったんだ。俺はお前の強さと評判に舞い上がって……軽率だった。お前があの男と同じ《悪魔》のはずがねえだろ」
「わかってますよ、そんなつもりで言っていないことくらい。だから気にしてません」
「本当に気にしてねえヤツはそんな顔をしない」
「…………」

 私は深呼吸をして、口を開く。
 いくつかの意味で話を切り替えるタイミングだと思ったのだ。

「とにかく、私は憲兵にはなりません。調査兵になります。明日の新兵勧誘式でそれを表明するつもりです」

 一瞬の間を置いて、

「何言ってんだ!?」

 ナイルさんが声を張り上げた。

「調査兵団なんざ許さねえぞ! 新兵の半分は最初の壁外調査で命を落とすんだ! 俺は絶対に認めねえからな! 絶対にだめだ!」
「……まるで親のように言うんですね」

 思わず吹き出して笑えば、ナイルさんは目を吊り上げた。

「親みてえなもんだろうが! 俺はお前に名前を与えたんだ!」
「――もちろん、感謝していますよ」

 私はカップを傾けて、

「それでも、憲兵になるつもりはありません」

 はっきりと告げる。

「だって憲兵は『壁の中の秩序を守ること』が仕事ですから。私が兵士になった理由とは異なります」

 しばらく沈黙が降りた。
 そろそろ解散式が始まる時間だと思っていると、

「なあ、俺にはやっとわかったぞ」

 ナイルさんが言った。声が少しかすれている。

「お前が兵士を志願した理由。身寄りがねえから、俺に厄介にならねえためだからじゃない」
「…………」
「本来なら十番内に入っているはずなんだ、お前の成績は」
「…………」
「それをこの成績に甘んじているのは、この訓練兵団という組織が巨人を殺す技術を高めた者が上位へ食い込むシステムだからだ」
「…………」
「そもそもお前の成績はどこかおかしい。どれもある程度の評価を収めているが妙だ。なぜならそれは――普通の連中とはほとんど逆なんだ。力を入れるべき学科が、あべこべになってるんだよ」

 ナイルさんはまっすぐに私を見た。

「なあ、リーベ・ファルケ。つまり、お前は――人間を殺す力を身に付けるために兵士になったんだろう?」


(2014/07/19)
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