私はそれから四苦八苦してメールの飛ばし方を探り当てた。メールアドレスがわからなかったからだ。名前の横にある小さなアスタリスクをクリックすればメールソフトが起動することに、三十分以上もサイト内を徘徊してようやく気付いた。元来この掲示板は個人情報の公開を禁じているため、スレを立てるにもレスをするにも、タイトルと名前、本文以外に書き込む場所がない。数ある書き込みの中メールリンクが唯一このレスに記載されているということが、魔法のように思えた。私にレスをくれた誰かがメールリンクタグを直接打つか何かして、裏技的な手法をこうじたのだろうとちらりと思わなくなもかったけども。
 メールソフトを起動して、メールを送る。



件名:ミィです
本文:掲示板に書き込みしたミィです。お返事とご協力ありがとうございます。よろしければ誘拐して下さい。でもあまり痛いのは嫌です。



 もっとかわいらしく書くべきか、畏まって書くべきか迷ったが、結局簡素な文面に落ち着いた。送信ボタンを押す。それから、もう一度自分のスレがあるウェブページに戻って画面更新ボタンを押してみた。



-- error! --
存在しないページです。



 赤字でそう表示される。驚いて再度画面を読み込んでみたが、結果は同じだった。スレ一覧ページに戻り、ようやくその理由を知る。



『2011/0x/xx 管理人巡回しました。規約に反した書き込み、掲示板の主旨に沿わない書き込みは削除いたしました。ルールとマナーを守ってご利用下さいますよう、お願いいたします。あまりに逸脱した内容や、繰り返し同じようなことを起こされた場合、こちらの運営に不具合を招くような書き込みをされた場合、IP拒否をさせていただくことも有り得ます。ご注意下さい。また、議論の紛糾した書き込みは新しくスレを議論掲示板に立てましたので、そちらをご確認下さい』



 ああ、私はやっぱり残念だ。慌ててさっきのメールアドレスをアドレス帳に登録する。時刻は午後一時二十四分。どうやら刻限は午後三時などではなく、もっと切羽詰まった一時半前だったらしい。
 いや、違う。
 管理人の巡回は、一時に行われたらしい。携帯電話の画面に目を懲らして私はため息をついた。
 ほんの一時間半の間だけ起こった奇跡を、私はまんまと捕まえてしまったのだ。
 これは、残念な予感しかしない。
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