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5.  



「何も、わからないんです」
 無機質なコンクリートに包まれた空間。あるのは簡素な机と椅子、そしてベッド。私が彼女を誘導したのは窓がない薄暗い部屋だった。唯一の出入り口には、鉄扉が重々しく存在している。
「何も? どこからがわからない?」
「どうして私が、此処に来てしまったのか」
 ふわりと草木の匂いが香る女から話されたものは、信じようにも無理がある夢物語だった。

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