過去原稿 | ナノ


4.  



 この前の侵入者は二人組だった。数か月前に起きた事件を思い出しつつ、アジトを歩き回りながら周囲に目をやる。
 やたらと目付きの悪い奴と、頬に傷の入ったサングラスだった。どちらも男。捕らえたのは私ではなく、いつも無口な上司。そいつらがその後どうなったかなんて、その頃下っ端中の下っ端だった私には知る由も無い。
「あの……っ」
 高い女の声が聞こえた。しかも、泣きそうに震えている、私には聞き覚えのないか弱い声。こんな声を出す同性を私は知らない。侵入者だと咄嗟の判断をし銃口を向けてみるものの、その対象者に首を傾げるしかなかった。
「此処は、何処ですか……?」

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