ぶろぐ | ナノ

坂道を駆けゆく幻影に告ぐ。
  

 モラトリアムが終わってしまう。
 今までわたしを守ってくれていた“学生”という殻が木っ端微塵に砕け散ってしまう。
 こわくてこわくてしかたない。しかたないけど、いつかは来るんだからしょうがないんだ。
 しょうがないんだけど、たまらなくこわい。

 大学生というのは不思議な期間だった。お酒が飲めるようになって煙草が吸えるようになったのに学生として扱われる。まだ学生だもんね、という目が向けられる。未熟だから、という免罪符を与えられた優しくて生温い環境にいながら、それでも成人者として扱われることがある。
 純粋にただ学びたいことだけを学べる場所というのも面白かった。たまに違うこともあったけど、でも本当に不思議な時間だった。これがわたしの勉強なんだ、と思った。ただ正解にたどり着くための作業ではなく、“考える”ことができた。楽しかった。
 最初はその“考える”に躓き、わたしにこの学問は向いていないと何度も思った。好き勝手作品を読んで自分勝手な感想を抱いて終わりでよかったのに、どうしてそれを専攻にしてしまったんだろうと思った。何度も後悔した。でも、卒業が間近に迫った今、わたしにはこれしかなかったんだろうと思う。他のことではきっと四年間も続かなかった。

 でもいつまでも嫌なこともあった。人前に立つこと。意見を言うこと。どうしてこんなにディスカッションがあるんだろう、プレゼンのような場があるんだろうと思った。学科の方でも、資格の方でも。毎回毎回胃が痛くなってつらかった。それもぜんぶ経験だったなと今なら思えるけど、でもつらかった。がんばったねと自分に言ってあげたいくらい。
 資格、よく取れたなぁと我ながら思う。あんなにも、大学一年生の頃から「わたしに授業なんてできっこない」と思い続けていたわたしが、なんだかんだ三週間を乗り越えてしまった。
 本当に大学では不思議なことばかりだった。

 対人関係について。一年生の頃はどん底だった。わたしの望むような関係が築けなかった。何度も何度も何度も何度も何度も何度も高校に戻りたいと思った。縋るように暇さえあれば高校の友人たちに会っていた。
 でも、今はあの頃が遠い昔のように思えるくらい楽しくてしょうがない。尊敬できる人をちゃんと見つけられた。この人と過ごしたいなと思える人がたくさんできた。わたしにとってはたくさん。尊敬できる人としかいたくなかった。自分の成長が見込めない人間関係は嫌いだから。我儘だと思う、でもそれも学生のうちだけは許されたかった。
 この人はすごい人だな、すごすぎて近寄れないなと思っていた人たちと仲良くなれている今がすごい。話してみたら気が合ったりと不思議なことが多かった。不思議だ。すべて不思議。この大学を選んでよかったなと思う。最初の頃はあんなにも後悔していたのに。

 振り返ってみると、好き勝手していたなと思う。四年間ずっと。好きなことばかりしたし、好きな人とばかりいた。それなりに大変なことやつらいこともあったけど、でも幸せな四年間だった。
 卒業は人生の節目だと思う。最後の学生生活が終わってしまうんだから、それなりに大きな節目。
 その日を、始まりの日にはいなかった人が一緒に迎えてくれるらしい。すごいことだと思った。また不思議な気持ちになった。少しだけ泣いた。嬉しかった。
 あんまりこういうことをここに書くのは得意じゃないし、いつか終わりが来てしまったらと思うと残っている文字を見てつらくなるから書きたくなかったのだけど、でもこれから先一緒にいられるようにという願掛けも兼ねて書いてしまおうと思った。
 これから先の節目も見守っていてほしいし、わたしも見守っていきたい。そうなれたらいいな。そうなりたい。

 社会人になるのがこわい。責任が大きくなるのが、殻や免罪符がなくなるのがこわい。でも、きっとつらいことばっかりじゃないよ、とその人が言ってくれたから、その通りになる気がする。大丈夫、大丈夫。

 取り留めもなくぐちゃぐちゃに書いてしまった。恥ずかしいことも書いてしまったし。でも、すっきりした。
 これから先がんばらないとな。焦燥感で何度も死にそうになっているけど、大丈夫、きっとどうにかなるよ。



→追記でもう少し恥ずかしい話。

追記

2018/03/20 00:52

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