油断大敵、大胆不敵


「へー、先輩の部屋ってこんなカンジなんですねー」
「おい、あんまり見るなよ。汚ねえんだから」
自分から呼ぶと言ったが、何分突然だったもんで部屋の片づけなんて一切できていない。いつもと同じ汚い部屋だ。
部屋中に散らばるプリントや教科書、ごみ箱からはごみが溢れんばかりになっている。
…我ながらなんて汚い部屋だ。呼ぶの明日にすりゃよかったかな。

「汚くて悪ぃな。次は綺麗にしておくからっ…!」
部屋の入り口で止まっていた俺が沖川を振り返った途端、俺より背の低いやつに首の後ろに手を回され、そのまま首を下に向けられる。と、必然的にやつとほぼ変わらない目線になる。
「先輩って隙だらけですよね。今もホラ」
ちゅっ。俺と沖川の唇が触れ合う音。いきなりのことに、俺は目を丸くすることしかできなかった。

「ん、むっ…はっ」
初めは優しかったキスも、だんだんと激しいものに変わっていく。口の中を、沖川に貪られる。息が、苦しい。

「やーらしいなあ先輩は」
呼吸困難と深い口づけのせいで目から生理的な涙が零れた俺を見て、沖川がそんなことを言う。
「もう、食べちゃっていい? いいよね?」
問いかける風でありながら、自分勝手に進めていく沖川。へたれた腰を抱き起こされ、そのままベッドに下ろされる。あいつ、そんなに力あったか…?

「先輩から誘ったんですからね」
そう言って、俺の服を脱がしにかかる沖川。へ? えっ? どういうことだ?
「おま…何して」
「何って、先輩襲ってるんですけど」
「襲う…?」
蕩けた頭では思考がうまくいかず、言っている意味がよくわからない。
「今から俺に食われるってことですよ、高崎センパイ」
「えっ!?」
ようやく頭が理解したようで、言われたことの意味がわかった。

「ちょ、お前やめろって…!」
「遅いですよ先輩」
沖川を引き剥がそうとするが、時既に遅し。あいつの手が脱ぎかけの服の隙間から俺の胸板を触る。
「ひっ」
男だから何も感じない…そう思っていた、のに。確固たる情欲の匂いを伴って触れてきた指に、そこは反応してしまう。
「なんだよ、こ…れ、」
「感じますか、先輩」
「そんなことあるは、ず…っ」
くねくねと厭らしく触ってくる指に思わず感じてしまい。高い声が出る。

「ははっ、ちゃんと感じてるじゃないですか。才能あるんじゃないすか、センパイ?」
「そんな才能、あってたまるかっての!」
今度こそ沖川を押しのけようと、腕であいつの胸を押す。が、腕にうまく力が入らず押し返すことができない。
「くっそ!」
舌打ちをしたところで状況が変わるはずもなく。いや、むしろ悪化している。
「…それが誘ってるっていうんですよ…っ」

びりっ! さっきまでとは違う乱暴さで、沖川が俺から服を破り取る。
「や、やめろっ」
「…今更そんなこと言われても、無理です。あなたを食べたい…!」
そう言うなり、深い深い口づけを仕掛けてくる沖川。どこか必死さを感じる、余裕のない口づけだった。






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