Anti Eroe.
俺も、3歳になりました。
一人で食事・排泄に始まり、着替えから日常生活まで出来るようになった。永かったっっ!いろいろと耐えるのは辛かった。
そしてもう1人、"家族"が増えました。
「つっくーん。ぱぱでちゅよー」
「…やめなよ」
「ほら、ナマエも!お兄ちゃんでちゅよー」
「ふふっ、アナタったら」
あれ?デジャヴ?
沢田家に待望の次男が生まれました。
ふんわりとしたクルミ色の髪。大きな琥珀の瞳。俺が綺麗な顔立ちだとしたら、この子は砂糖菓子のような甘い顔で。
お噺通りの"綱吉"くんです。
………あれだけ悩んでいた自分が恥ずかしい。
「あー、う」
「はいはい、なあに?つーくん」
女性は綱吉につきっきりで、男性はそんな2人にデレデレ。
そんな彼らを見て、納得。
やっぱり『わたし』がそこに居るのは可笑しいんだ。それで良い。コレが正しい。
―――そう思うのに、胸が痛いのはなぜ?
判ってる。……あの子が生まれたから。
世界はあの子。あの子はセカイ。
綱吉に"拒絶"されたら、異端な"俺"は舞台袖。
演目は俺を外して開帳。
あの子に"嫌われる"のが怖い。
世界が怖い。
異質な俺が怖い。
わたしが、怖い。
「ナマエー?」
「ナマエくん?」
きっと、貴方達を"母"とも"父"とも呼べないのはその所為。
どう頑張っても『わたし』の"両親"は前世の人達で。"俺"の両親とは思えなくて。その様が、「お前の居場所は無いのだよ」と言われているようで。
「…ごめん、なさ ぃ」
謝罪は陽気な笑い声に、溶けて消えた。
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