domani | ナノ



  宝石箱のお茶会


「「うめー!」」
「…はいはい、ヨカッタデスネ」

スポンジと生クリームを口一杯に詰め込んで、震える目の前の二人。
テーブルの上にはショートケーキから始まりタルト、チョコレート、モンブラン、抹茶ロール、果てはプリン・ア・ラ・モードまで。甘味がこれでもか!というくらい並んでいた。

………見ているだけで甘ったるい。
隅に追いやられたカップを手に取り、鼻をくすぐる香りに息を吐いた。一口、味わえば広がる独特の苦味と酸味。
嬉しそうに消化していく二人を眺めて、俺も昔はこれくらい食べてたんだけどなー、と独りごちる。一度死んで、生まれ変わったからか。味覚が変わって、甘味はそれ程、むしろコーヒーや紅茶などの飲み物にうるさくなった。

そんな俺が気に入り、且つ友人二人が足繁く通うココは、並盛り商店街内のケーキ屋。『あの』ナミモリーヌ。の、店内。

「美味しい?」
「もちろん!!」
「この新作アタリ!絶対もう5回は食べに来る!!!」

そのまま食べられるカフェスペースが有り、そこで出されるエスプレッソは中々の味わいである。うん、彼の家庭教師様が入れるのも好きだけど。

満面の笑みで、次々と平らげていく二人に驚くやら呆れるやら。いっそ清々しく、そこまで満足してくれればこちらも嬉しくなる。

「沢田は食わねーの?」
「……俺はいいや。サキ、要る?」
「要る!!」
「あ、サキだけズルい!俺も!!!」
「はいはい。―――すみません、コレもう一つ追加で」

一応、流れ上注文したケーキをサキに譲れば騒ぐユキ。いい歳した子供がやめなさい。ただでさえお前はでかくて目立つんだから。


「―――で、沢田の弟またいろいろ賑やかなんだって?」
「ん?………そう言えば、イタリアから転校生来たー!って妹が騒いでた」

フォークを咥えながら、ユキが振る話題は大事な弟のことで。それに便乗して、2つ違いの妹を持つサキが情報を付け足す。
二人は俺が家族第一だって知ってるし、綱吉大好きだって解ってる。

「あー、たぶん最近ツナが云う『ゴクデラ』くんって子かなぁ…」
「じゃね?銀髪のカッコイイ子だって。『ヤマモト』くんも良いけど……って、妹は迷ってるっぽい」
「『ヤマモト』って野球の山本?あいつイケメンだったわー」
「そか。それも最近言ってた」
「あれ?沢田の弟ハーレム?」

ユキが悪戯気に笑う。
―――その頭を無言でひっぱたいてやった。

「いてっ!」
「やーい、バーカバーカ」
「くそっ!そんなこと言うサキは……スキあり!!」
「!あっ、ちょっ!!!」

サキの食べていた桃タルトから、器用に桃だけ奪うユキ。焦り、涙目になるサキ。
渋々自身のケーキからイチジクを分けるユキ。途端、笑顔になるサキ。

じゃれ合う二人を平和だなー、とか。こいつらも黙ってればイケメンなのになー、とか。この遣り取りカップルだよなー、片方女の子じゃないのが惜しいなーとか。どちらかといえばタレ目のサキが彼女役かー、とかとか。
呑気に見守りつつ若干ヒドイことを考えていたからバチが当たったのか。

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