翌日。

杏奈は承太郎がいる牢屋の前にいた。

承太郎に帰れと言われ続けても、杏奈は警官たちが承太郎を恐れて近づいてこないことをいいことにそこに居座り続けていたのだ。



「ねえ、なんでそんなに知らず識らずのうちに物がまた増えてるわけ?本にダンベル、ギターに服まで……。って言うか、承太郎が言う悪霊って何者よ。わけわかんないわ」

「杏奈。おまえには見えたのか、あの『悪霊』が」

「ええ?見えてたけど?けどおかしいよね、他の人には見えてなかったなんて。ホリィさんには見えたみたいだけど」



確かに見えた人の腕のようなモノ。

悪霊というのなら、まさか自分にも霊感が?
とも思ったが、杏奈自信自分に霊感などあるかないかなどわからない。

むしろそんなものを見たのは初めてだったし、ないと思っている方が強い。


そんな時、



「大丈夫…孫はわしが連れて帰る」

「孫…?」

「承太郎!おじいちゃんよ!おじいちゃんはきっとあなたの力になってくれるわ。おじいちゃんといっしょに出て来て!」



承太郎のことを孫と呼び、ホリィにおじいちゃんと呼ばれた人物は、承太郎がいる牢の前まで来ると、牢の戸を開けた。



「出ろ!わしと帰るぞ」

「消えな。お呼びじゃあないぜ…。おれの力になるだと?なにができるっていうんだ…。ニューヨークから来てくれて悪いが…おじいちゃんはおれの力になれない…」

「は!」

「見えたか?気づいたか?これが悪霊だ」



いつの間にか、承太郎の手の内に老人の義手の一部が握られていた。

老人は驚き左手の手を見る。

欠けた部分を見るかぎり小指を取られたらしい。

杏奈は「あーあ…」と頭を抱えるように静かに息を吐いた。

承太郎は人が親切心とかで行う行為を、お節介だと言って突っぱねることが多々ある。

今回もそれがいい例で、承太郎は祖父と名乗る老人を追い返そうと言うのだ。



「おれに近づくな…。残り少ない寿命が縮むだけだぜ」



そう言うと承太郎は自身で牢の戸を閉め、老人に背を向けた。



「アブドゥル。君の出番だ」



「三年前に知り合ったエジプトの友人アブドゥルだ。アブドゥル…孫の承太郎をこの牢屋から追い出せ」

「やめろ。力は強そうだが追い出せと目の前で言われてすなおにそんなブ男に追い出されてやるおれだと思うのか?いやなことだな…。逆にもっと意地をはって、なにがなんでも出たくなくなったぜ」

「ジョースターさん………少しょう手荒くなりますが、きっと自分のほうから「外に出してくれ」とわめき、懇願するくらい苦しみますが」

「構わんよ」

「パパいったい何を!!」

「お…おい、さわぎは困るぞ」

「だまってろ!そこのお嬢さん。そこは危ないからこっちに来ないさい」

「え?あ、ああ…わ…わたしのことですかあ?」

「そうだ。おとなしくこっちに来るんだ」

「は、はあ………」



老人に呼ばれ、杏奈は渋々と言ったようにその場から離れ、ホリィの隣に行く。

ホリィは心配そうに承太郎とその祖父、アヴドゥルと呼ばれた男の成り行きを見守っている。





「これはッ!」

「そう!おまえのいう悪霊をアブドゥルも持っている。アブドゥルの意志で自在に動く悪霊!悪霊の名はッ!」


「『魔術師の赤(マジシャンズレッド)』」





「う…うぐぐ、あ…熱い!火…火だ!や…焼ける。お…おれの腕が焼ける!い…いったい悪霊とは?」

「ッ、承太郎!」

「パパ、承太郎に何をするのッ!」



「おおお、出…出おったよ…。予想以上の承太郎の力!」




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