みじかいゆめ | ナノ



バレンタインの罠 2/4



バレンタイン当日の朝。
私は焦っていた。一番に渡してリヴァイを驚かそうと企んで、いざラッピングを施そうとすると、肝心のリボンが無くなっている事に気がついたのだ。

「どうしよう・・!絶対キッチンに忘れたんだ・・!」

ああ、リヴァイはもうとっくに起床して、洗面台の方から歯磨きをかしゃかしゃやってる音がする。

リボンを掛けないと絶対に渡せない・・・。
女の子の一大イベントで手を抜くなんて、リヴァイはリボンの不在に気付かないのが分かっていても無理だった。
リヴァイに抱えきれないほどの愛を伝えるための貴重な日。出来うる限りの全てを、恋人のために尽くしたい。

そしてクリスマスに決行したサプライズ誕生会の教訓として、リヴァイに居場所を告げずに離れるのは周りの人たちに被害が出かねないとも分かっている。
隠れて料理の準備を進めていた私の元へ、リヴァイの尋問から何とかすり抜けてきた仲間たちが次々に逃げ込んで来て早く早くと開始を急かしたのだ。

リヴァイは思っているよりずっと心配性で、私に目を配ってくれている。今日はそれが試練となって立ちはだかってしまった。


うーん・・・・どうしよう・・・。

考えてみても、選択できるのは二つしかない。
まず大前提としてチョコレートを一番に手渡すことは諦めなければいけない。
そしてその上で、リボンを取りに行くのはこのままリヴァイが本日の執務に従事するまで待つか、今リヴァイが歯磨きをしている隙に部屋からこっそり抜け出してキッチンに「ナマエ、何してる。今日はやけにのんびりだな?」

・・・・こんな時のリヴァイって、なんてタイミングがいいんだろう。兵士の勘ってやつなのか、私のこっそり済ませたい企みは大抵リヴァイを引き寄せる。

ぎごちなく振り向き、取り敢えずのぎこちない笑顔を見せる。
選択肢は一つ。後で取りに行くしかない。チョコレートを渡すのは就寝前に遅らせるしかない。

「わ、ほんとだね!?もうこんな時間!!私も早く支度しなきゃ〜!」

ああもう、こんなわざとらしいの、バレバレすぎる・・!
隣を過ぎていく時に見れないリヴァイの瞳が訝しげに顰められているのが嫌でも分かってグサグサ刺さったけれど、あまりに明ら様だったからか追求されなかったのが救いだった。
リヴァイからの追求に白状してしまわない自信なんか、私にはこれっぽっちもないのだ。

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