みじかいゆめ | ナノ
これからは隣で B
「ナマエ・ミョウジだな。」
「ひっ!!」
兵舎で会うことは諦めて、いつもナマエを見かける朝駆けのコースに待ち伏せさせて貰った。二人きりの方が都合もいい。
突然現れた俺に驚き、尻餅をついて蒼白するナマエを見下ろしてほくそ笑む。
「な!なんで?!・・・何でっ?!」
「何で何でうるせえ。俺だって朝駆けしてるんだ馬鹿。てめえは気づいてなかったが。
それより・・・俺を避けるとはいい度胸だよな?ナマエ。」
ナマエは口を金魚みてえにぱくぱくさせて言い訳も弁解も何も言えない。
やはり俺が避けられていた事は間違いないらしい。
・・・・という事は・・・。
思い当たる理由は、一つしかない。
「ナマエ・ミョウジ。特別作戦班に入れ。」
「・・・・・・嫌、です・・。」
やはりこれ・・・か。
快諾してくれる気など、サラサラないらしい。
「何故だ。」
「私は・・・ミケ分隊長の下で戦いたい、のでっ・・・!」
ミケの下で働きたい。
そう言われた事がどうも癇に障った。
「それだけか?」
「・・・は?」
「理由はそれだけかと聞いている。」
「・・・は、い。」
「てめえはミケが好きなのか。」
”ミケが好きなのか”
そう問いかけた自分の台詞に苛立つ。
「へ?・・・いや、そういう気持ちは全然ありませんが。」
「ならいい。明日から俺の下へ就け。ミケにも話しておく。」
「!?いえ、あの、良くないです!全然!
大体、私には勤まりませんよ・・!」
「戦闘録を見て選んだ。お前なら問題ない。」
「え・・・・っと、そのですね、あれですよあれ。
私、彼氏がいるんでした・・!すみませんがまだ死にたくないのでこのお話は無かった事にー」
「ほう。」
面白い。
さっきからミケを理由につけて断ろうとしたり、終いにゃ”彼氏”だと・・?
周りの男の好意にも気付かない程、鈍感な癖に。
「・・・彼氏・・?」
「そ、そうなんです。彼氏です・・!」
顎を掴んで目線を合わせると、すぐに逸らされる視線。
「・・・そんな嘘が、俺に通用するとでも・・?」
「へいちょ・・・!!」
そのまま、薄くて血色のいい、嘘ばかり吐く唇を塞いでやった。
口内を味わうようにぐるりと舌で舐めあげ、捕まえたナマエの舌を吸うと目の前に見える瞳が熱を持ち始めて呼吸が乱れる。
その姿に、心が悦ぶ。
「・・・いいのか。”彼氏”いるんだろ。」
「んっ・・・!ぁ・・・・んん」
拒否しなければと眼だけは固く閉じてみても、快感には逆らえないらしい。
この胸におかれた手の平は、拒絶なのかそれとも・・・・・。
「抵抗するのを忘れている様だが。」
「!!ん〜!!んんっ!」
「そろそろ正直に理由を話さなければ、先に進んじまうぞ。
別に俺は構わねえが・・・。」
ナマエの脚の間に差し込んだ膝を持ち上げ、その中心を刺激する。
ぐりぐりと押し潰す動きに合わせて、身を震わせても必死に声は出すまいと自分の指を噛んでいる。
「こんな色気のねえ下着を着けてる様子じゃ、彼氏なんかいねえんだろう。」
「ほっ、といて!くださっあ・・・!」
襟元に指をかけ、中を覗くとガキくせえ下着が見える。
いつもミケの隣で笑っているナマエの顔を思い出し、堪らず腰を撫で上げ首筋に舌を這わせる。
甘い声と、ナマエの香りがした。
「へいちょ・・!もうっ、もう・・!」
「何だ、やっと話す気になったのか?
また嘘をついたらもっと酷い仕置きをしてやろう。
そうだな、お前の×××を××して×××ってのはどうだ。」
「〜〜っ!!言います!ちゃんと言いますからぁっ!これ、やめっ!」
仕方がなく一旦身体を離す。不本意だが。
なんならこのまま先に進んでしまっても構わなかった。
止めようが続けようが。どちらにせよ、吐かせる自信はあるのだから。
息を荒げ、上気した頬と潤った瞳で力無く俺を見るナマエが見える。
・・・・この顔は弱ぇな。
再び上向きになり先走ろうとする気持ちを、眉間を解して誤魔化した。
「わたしっ・・・兵長に幻滅されてしまうのが怖いんです・・。
・・・・あの、怒りませんか・・?」
「続けろ。」
「私は、見ての通り他の兵士より体格に恵まれてないですし・・・・だからこうして人より時間をかけてなんとか、自信を保ってきたんです・・。
兵長やペトラさん達と並んで特別作戦班に入れるような人間ではありません・・・。
きっと、期待にお応え出来ずに兵長を幻滅させてしまうだけです。
兵長にがっかり・・・されたくないんです・・。」
「だから・・・ごめんなさい。」
そう言って下げられたナマエの頭。
「お前は俺が信じられねえのか。」
「え・・・?」
「俺がお前を選んだ。それで充分だろう。」
「・・・・・・。」
「自分で選んだ相手に、幻滅なんかしない。」
「でも、本当に怖くて・・!」
もう一度、細い手首を引いて胸に抱きしめた。
この分からず屋には、こうした方が早いと思ったからだ。
「ごちゃごちゃ煩えな。黙って俺に従え。がっかりさせたくねえんだろう?」
こっくりと頷く頭を撫でる。
「利口だな。それでいい。」
やっと素直に俺の傍にいる気持ちになったらしい。
こっそりと朝駆けや自主練習の努力に励むこの鈍感女を、ずっと見守って来ていた。
子供っぽい笑顔や無邪気な性格の裏の、誰も気付いていない努力に気付いてしまった時から、なんとなく目が離せなかった。
「お前にも、俺を選んで欲しい。」
見開かれた瞳。
これからは隣で少しずつ、同じ様に自分に惹かれて欲しい。
「入ってくれるな。」
「ー・・・はい。」
はにかんだ顔で返ってきた返事に、顔が綻んだ。
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