みじかいゆめ | ナノ



兵士長の恋愛事情 A



それから、リヴァイと私が特別だけど微妙な関係に至るまでには回数はかからなかった。

というのも、会うのは週に一回で水曜日の正午と決まっていたから時間はかかったのだけれど、片手分会った後にはもう側から見ればリヴァイは完璧に私の恋人だった。

最初はブルーノさんの店で”買い物のついで”で会い、たわいもない話をしてその場で別れるだけの関係だった。

それが三回目にはそこから共にランチまで済ませる関係になり、五回目には荷物を奪われて家まで送り届けて貰うまでになった。

二人で私のアパートに帰るとばったり鉢合わせた近所の仲のいいおばさんにも「あら、いいわねえ。」なんて微笑みかけられたりした。

その時には「ありがとうございます」と「恋人じゃないんですよ」という両極端な返しが頭でひしめいてしまって何とも言えず、ただぎこちない笑顔でおばさんに応えた。

隣に居るリヴァイを盗み見ると、いつもと同じで掴みどころのない顔をしていてますます困ってしまったものだった。
照れるか困るか、どちらかしてくれれば分かりやすいのに。


リヴァイが家まで運んでくれた荷物を机に置き、ソファに座ってぼうっとしてみる。

そして数える事を止めたここ一カ月。
ブルーノさんのお店での買い物の前に、家までの迎えが追加された。「その方が安全だ。」との事で、私も二つ返事で頷いてそれに甘えている。リヴァイのおかげでゆっくりと真っ直ぐ前を見据えて街を歩けるようになったのだ。


「ふーっ・・・。」


それでも、私は困り果てていた。

私はリヴァイの事が好き。それは間違いない。「おい」と無愛想な声をかけられて、名前を教えて貰えなかったあの日からリヴァイの事が好きなのだ。

でも、リヴァイは・・?

リヴァイは私の事を、どう思っているんだろう。
二人でいる時に表情を伺ってみても、その顔は決してだらけてないし何時だっていつも通り。最初から同じで変わらない。
家まで送ってくれた時だって、「それじゃあな。戸締り忘れるなよ。」とだけ言ってさっさと帰ってしまう。玄関先でどぎまぎしたり、別れを惜しむ素振りもない。

なのに兵士長として忙しいリヴァイが、わざわざ家まで来て再び送り届けてくれるまでの三時間。
その時間を毎週割いてくれている事は、特別な事なんじゃないのかと期待する心をたしなめるのにそろそろ疲れ始めた。

ハッキリさせたい、でも怖い。
リヴァイと会って笑っていても、ふとした時にその二つの感情の狭間に迷い込んでしまう。最近は特にそんな時間が多くなっている。
”特別”に近づく程に、歩みは遅くふらふらとして逃げたがる。

照明にかざした手のひらを遊ばせてみても、何も分からない。


「一体どうしたいんだろう、私・・。」




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