みじかいゆめ | ナノ



きみのすきなとこ





私の恋人は、リヴァイ兵士長。


でもただの「兵士長」という言葉だけでは、まだ彼を表すに足りていないと思う。


人類最強と呼ばれ、大体3人係でやっと巨人を1体倒すのだけれど、彼は一人で何体も倒してしまう。

兵士4000人くらい居る1旅団と等しい戦力があると評価されている。


そのくらい凄いお方だ。




その恋人の私はというと。



いたって普通。


容姿も可もなく不可もなくという感じで、性格も明るいとまでは言えないけれど根暗でもない。


立体機動も対人格闘の成績もぜーんぶ平々凡々。


リヴァイが選んだのは、なぜ私なんだろう?



何で私のことが好きなの?どこが?!



ずっと疑問に思っていて、思い切って聞いて見ても「さぁ。何でだろうな」「わからねえ。」「可愛いからじゃねえか(心ここに在らず)。」


ぜーんぜん!真面目に答えてくれない。



「・・結構悩んでるのにな。」



今日も至って平凡な活躍で訓練が終わり、立体機動で上がった太い木の枝に座って考える。


そう。結構悩んでるのだ。



だって全然つりあってない。


怖くて周りの誰にも、親友ですら言っていない。



「つりあってないよ。」って言って、笑われるのが怖いんだ。


体育座りをして頭を伏せる。


どこか一つでも、秀でたところが欲しい。

何で私には何もないんだろう。


涙が出て、目を置いている膝小僧が濡れていくのが分かる。



「おい。ナマエ。」


落ちないように顔を出して下を覗くと、リヴァイだった。



今は会いたくない。

まだ考え事の途中だもん。


そのまま何も言わず、フイっと元の体育座りに戻る。



「・・ほぅ。」

リヴァイが下から少し怒って言ったのが聞こえた。





「怒ってるのか?」

「ちがう。」

「動けないのか?」

「ちがう。」

「泣いてるのか?」

「・・ちがう。」



地面と木の上から、顔も合わせず押し問答になった後、リヴァイは「付き合ってられん。俺はもう行くぞ。」

暗くなる前に帰れよ、そう言って帰って行った。


足音が、どんどん遠ざかる。



「・・・・・。」

別に期待してた訳じゃない。

私は考える時間が欲しかったからこれでいいんだ。



でもなぜか少しイライラしてしまって、涙も止まってしまった。



荒れる気持ちを落ち着かせようと、そのままじっと耐える。








ー ダンッ! ー



突然、目の前から大きな音がして、枝がビリビリ揺れて、森の静けさの中で瞑想してた私はびっくりしすぎて心臓が飛び出た。

そのくらい驚いた。


目をまあるくして見ると、リヴァイが腕組みして立っていた。


眉間に寄ってる皺もいつもより深くて目も鋭く睨んでて、怒ってるらしい。



「おい。てめえ、やっぱり泣いてたんじゃねえか。」


そう言うとしゃがみ込んで、私と目線を合わせた。



「・・うん。本当は泣いてた。嘘ついてごめんなさい・・。」

リヴァイの瞳に捕らわれて、途端に素直になってしまう。

目を合わせられると、いつもこうだ。



素直になった私に満足したのか、リヴァイは片膝をついて、枝の私の隣のスペースに腰かけた。




「・・・そういうところだ。」

「え?」

唐突な言葉に理解出来ず戸惑う。


「・・お前は、さっきみたいに強気になって自棄になってると思ったら、俺を目前にすると途端に大人しく素直になる。

訓練中も俺をカバーしたと思ったらアンカーの射角が甘すぎて落ちかけたり、対人格闘で男を投げ飛ばしたと思ったら今度は投げられて受け身をとれずに怪我したり。

いつもヘラヘラ笑ってて悩みなんかなさそうだが、こうやって1人でこっそり泣いてたりもする。


危なっかしくて目が離せねえ。」



ドキン。

胸の音が身体中に響く。



「お前は、自分は普通すぎると思ってるかもしれねえ。俺とつりあってないとか馬鹿な事まで考えていそうだが、それは余計な考え事で悩むだけ無駄だ。

俺がお前を選んだ。

俺はお前になら甘えられるし、お前になら甘えられたっていい。

それは子供っぽいかと思えば常識じみた事を言ってきたり、強いと思っていたら弱かったお前だからだ。

そんな変な奴はお前しかいない。

だからナマエを選んだ。それだけだ。」



ドキン ドキン


リヴァイから目が離せない。

熱い大きなかたまりが、胸につかえて息苦しい。


初めて聴いた、リヴァイが平凡な私を好きな理由。



よし。そろそろ帰るぞ。


そう言って立ち上がって差し出された手を、私は掴んで立ち上がり、そのままリヴァイの腰に手を回して抱きついた。

狭いスペースの中しっかり立って、よろける事もなく抱き留めてくれる。


「・・・だいすきっ。」



「ああ。知ってる。」



リヴァイはそれだけ言って手を繋ぎ、そのまま兵舎まで二人で帰った。









( え!?兵長と付き合ってるの!?・・でも何かお似合いかもね・・! )

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