メガネ蛇と綿帽子02




 ある日、妹がいなくなった。病によって連れ去られてしまった。その報せを聞いて、俺は飛ぶように家に戻ってきた。
 集落の人々が総出となって、妹を送った。ただ、俺の目には、この行列は、絵本や絵巻で見かけた狐の嫁入りのように思えた。化粧をほどこされた妹が横たわる屋根のついた漆塗りの車を、集落の男たちが曳いていく。車が回ると、黒漆ばかりかのようであった側面に、隙間に隠れていた赤漆がちらついた。横たわる妹は白無垢と綿帽子を纏い、酒や鯛といったご馳走も供されている。これはまるで婚礼のようではないか。
 これが妹の願いであったと両親は言っていた。それがどういうことなのか、俺にはさっぱりわからない。
 艶やかな緑が波打つ夏の水田が海であるかのように、漆の車は山へと曳かれていく。

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