メガネ蛇と綿帽子01
とある秋の夜、押入れの隅に陶器の壺があった。壺をのぞきこむと、小さな青蛇がいた。とぐろを巻いて、水に沈んでいる。ぴくりともうごかない。
俺は蛇が嫌いだった。手足がないにもかかわらず牙があって、もしかすると毒もあって、手足があるものよりも素早く動ける。これが恐怖の対象とならないはずがあろうか。
だから、俺は壺ごと蛇を捨てようと、陶器に手をかけた。すると、鋭い声が背後から突き刺さってきた。
「にいさま、だめ!」
「どうしたんだよ、これ」
「脱皮、うまくできないみたいなの。だから、てつだってあげるの」
「蛇なんか気色悪いよ。どっかに捨ててこいって」
「どうしてそんなこというの。にいさまなんて、だいっきらい!」
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