おかたづけ(企画)
引っ越しの荷物が運びこまれた、まだ入れ物でしかない一軒家。開け放たれた窓と、響き渡る掃除機の音。
段ボール箱が山と積まれたリビングに、片付けを手伝いにきた子どもたちの声が跳ね回る。
「ねぇモモ、このお花の鉢植えこっちでいいの?」
「モモ、調味料って書いてある箱はキッチンに運んどくよ」
「重っ。紙は重いんだよ。箱詰めすんなよ。なんでこんなに本ばっかなんだよ。ふざけんなよモモ」
ちいさな女の子と、高校生と中学生の兄弟が、家主の名を連呼しながら荷ほどきを進めていく。
「腹減った。手料理くわせろ、モモ」
「あ、ミシンだ。モモ、今度、お人形のお洋服の作り方おしえて」
「モモ、お庭に木苺がはえてるよ。実がなったら一緒にジャムつくろーよ」
ついに飽きたらしい子どもたちの前に、ピンクのエプロンとクッキーの大皿が現れた。
「休憩にしようか」
段ボール箱のひとつをテーブルに見立て、エプロンに包まれた大きなお腹を背景に、子どもたちの目の前でクッキーの皿が置かれる。
「モモ、だいすき!」
女の子がモモに抱きつく。モモは優しく女の子の髪を撫でた。遠目から見なくとも、モモと女の子の体格差は熊と小鳥のようだ。
四人は段ボールを真ん中にして床に座った。談笑が真新しい家を満たしていく。
女の子が訊いた。
「ねぇねぇ、モモ。夏休みとか、お兄ちゃんたちと一緒に、遊びに来てもいい?」
姪の言葉に、モモは頷く。
「もちろんだとも」
弾力のある膨れたお腹を揺らし、丸顔を覆う無精髭を撫でながら、とても躯の大きな叔父さんは、とても嬉しそうに笑っていた。
おかたづけ
(オジサンの名前はモモジロー、その姉はモモカ、オジサンのわんこはモモサブロー)
魚の耳さま提出
お題/カラフル
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