The tale of a Leanan-Sidhe 04


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 この街は鮮やかさを欠いていた。
 僕は、この街を、けなしているわけではない。海に近く、潤いにくすんだ、透きとおった色にまどろむこの街は、僕が生まれ育った街に似ている。海を隔てたところにある故郷とこの街はよく似ているから、街を歩いていると、初めて出会った景色であっても、郷愁めいたものを抱いてしまう。
 ただ、故郷と同じように、この街には鮮烈さが足りない。
 道を歩いていると、時折、ほのかな生臭さに漠然と胸がざわつく。近く嵐がくるだろうという不安が、本能として、首をもたげる。常にというほどでもなく漫然と、風は海の欠片を運び、それを嗅ぐ度に、幻聴たる潮騒が湧いた。海の欠片が掻き立てるぐらつくような不安定さを僕は愛していたし、目にすることはなくとも恩恵を受け、潜ることはなくとも共に斃れる。共生であり寄生でもある、おぞましくうつくしい妄執が、この街と海の間にはあった。

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