七色アトラクティブ




すっと伸びている背筋。角張った大きな手。固く結ばれている唇。冷たい切れ長の目。真っ直ぐ前を見据える精悍な顔。


「ふああ…かっこいいいい」

「………___、少し口を閉じろ」


煩わしそうな表情にゾクゾクする。いつから僕はこんなマゾヒストになったんだろうか。いや太刀川とか迅とかにこんな顔されたら速攻シバくけどね。正宗さんがかっこいいから快感になるわけで、もうバッチリ正宗さん使用ですね僕ってば。


「少しでいいんですね。本当に優しくて素敵だな〜、僕の正宗さん」


少しも閉じてない僕の口には勿論、“僕の正宗さん”発言にも文句を言わない正宗さん。素敵。最高。ほんと僕には甘いよねぇ。無性にキスがしたくなって顔を近づけると、綺麗な手のひらに口を抑えられた。あ、せっけんの香り。あーもういちいちきゅんきゅんする。


「…帰るぞ」


ぱっと離された手に後ろ髪を引かれるが、それよりも嬉しさが上回った。帰れじゃなくて帰るぞってことは正宗さんのお家にお邪魔していいってことで。


「うああ嬉しいです正宗さんっ!早く行きましょう!あ、手を繋いでも良いですか?」

「駄目に決まってるだろう」

「えええー。正宗さんと手を繋がないと歩けません〜」


あ、ゴミクズを見るような目。強面の正宗さんにそんな目をされると、あまりにカッコ良くてドキドキしてしまう。全く気づいてないけどそれご褒美だよ。でもでもせっかくだし手繋ぎたいなあ。


「正宗さあん…」

「……分かったから早くしろ」

「!」


正宗さんの右手に飛びついて、恋人繋ぎにする。僕より少し冷たくて、大きい手。ああもうほんと幸せ。いつもは長く感じる駐車場までの距離が短すぎて辛い。トリオン怪獣ちゃんが廊下ぶっ壊してくれたりしないかなあ、なんてね。ずっと手を繋いでたいのは山々だけど、せっかく久々にお家に誘ってもらったんだし、早く正宗さん家に行きたい。


「あ。ねえねえ正宗さん、明日立てなかったらごめんね?」


顔を覗き込みながら上目遣いというあざといことをやってみる。ほんの僅かに目を見開いて、すっと顔を逸らされた。けれど正宗さんは髪をきっちりオールバックにしてるから耳がばっちり見えている。真っ赤、可愛いなあもう。


「いっぱい愛してあげますから、覚悟しといてくださいね」


繋いでいた正宗さんの右手に口づける。追い討ち。見事に正宗さんは何も言えなくなっていて、全力で壁の方に顔を向けている。

顔を隠すための猫背。じわりと熱くなる手。左手で覆われた口元。恥ずかしそうに軽く伏せられた瞳。背けられた真っ赤な顔。


「ふああ…かわいいいい」

「………___、少し口を閉じろ」


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