残念バレンタイン




嵐山隊。A級5位でありながら、ボーダーの顔。誰もが羨む美男美女で形成されている。おれの幼馴染みである佐鳥 賢もその一人。さてここで今日の日付けを確認しよう。2月14日、そうバレンタインデー。


「という訳で、爆ぜろ」

「どういう訳!?」


酷いと騒ぐ賢の両手には紙袋。中身はお察しの通りチョコだ。くそ、小三までおねしょしてはおれに泣きついてたくせに、何モテまくってんだよ世の中顔だなちくしょう。


「それ、重いだろーけどちゃんとお前が持てよ」

「分かってるって。去年酷かったからな〜」


賢は眉を下げて笑う。持ってやりたいけど、責められるのは賢だしな。しょうがない。

チョコの数は小学校の頃から多かったが、去年は特に酷かった。中学三年だから、高校が別になる女子が最後!と気合入れてきたのだ。いつもより重たそうにしている紙袋を1つ持ってやっていたのだが、それがダメだった。何で私のチョコは佐鳥くんが持ってないのやら、私のチョコはどっちが持ってるか確認させてやら、とにかく女子の恐ろしさを知った。

そして今年は高校で、全校生徒の数は中学より多い。つまり比例してチョコも多くなる。中三のときより多い。こいつマジでなんなの。ニコニコして受け取ってるのも凄い、こんなに貰ったら普通嫌な顔しちまうわ。さすがボーダーの顔。


「あ、ほら、リュックは持ってやるから貸せ」

「マジ?やった、___サンキュー!」


さっきまでへたってた癖に現金なやつだな。ほい、と渡されたリュックは重い。置き勉派なおれと違って、賢は最悪盗まれるから持ち帰り派だ。久々の教科書の重みを感じながら帰路に着く。


「今日もボーダー本部行くのか?」

「んー、一応顔だそっかなー」

「ふーん。ま、頑張れよ」


そこでも女の子からチョコを貰うとしたら、いや考えないでおこう。流石に胸焼けするわ。
昨夜は趣味の料理三昧だったせいか未だ抜けきらない眠さに欠伸をしていると、賢がでも、と続けた。


「…___が行くなって言うなら行かない」


そういえばコイツおれの恋人じゃん。ほんのり赤いその顔を見て思い出した。こんだけチョコ貰っといて、と今更感が凄いが賢の残念さはもっと今更だ。チラチラ見てくる賢に鬱陶しさを感じながらも口を開く。


「あーそういや昨日ガトーショコラ作ったけど余ってんなー。誰かいらねぇかなー?」

「えっ!いる!いるいるいる!」

「じゃあ、今日本部行けねぇな」

「!、う、ん」


ようやく意味を理解したらしく、嬉しそうに顔を綻ばせる賢に、おれも少しだけ頬を緩ませる。何だ、お前やっぱ可愛いじゃん。早く家に着かねぇかな。そしたらこいつはみんなの佐鳥から、おれだけの賢になるのに。



(帰り道の途中にもチョコをもらうサトケンにキレそうになるのは御愛嬌)



prev next
to list


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -