相互スポイル



ぽん、と軽い衝撃と同時に重くなった肩。あ、ついに寝た。起こさないように横目で___さんを見る。染めたり脱色したりと忙しい彼の傷んだ金髪しか見えなくて、少し残念だ。


『ちょっと待ってくれ、そんなの……』


カチカチカチとリモコンを押して音量を小さくする。パッケージに写っている男がおれに似てるだとか、そんな理由で借りてこられたDVDは所謂三流で、おれもさっきまでただくるくる変わる画面を見てるだけだった。けれど今は___さんがおれに凭れて寝ていることに何だか緊張してしまって、画面さえよく見えない。近い。静かに呼吸してるのが分かる。___さんとは同じくらいの背丈だから、肩を貸すのは少し窮屈そうだ。
…こんなとき、おれが女の子だったら膝を貸せたんだろうけど。生憎男であるおれの膝は固くて枕には向かないだろう。あー、でも、あれだな、肩も枕には向いてないし、膝の方が安定するよな。うん。
意味もなくまた___さんを見る。長い間睡魔と戦っていた彼は、もうピクリとも動かない。…顔、見たい。おれはそろりと傷んだ金髪に手を伸ばした。












「…、………ん?」


浮上した意識と共に目を開けると、悠一の端正な顔と天井が見える。あれ、おれいつの間に膝枕なんかさせたんだ。


「…おはよう___さん」

「ん、はよ」


柔らかく笑う悠一に気恥ずかしくなる。そんなに見つめないでくれ。つかもしかして寝顔ずっと見られてたのかうわあ。…でも、いいなこれ。悠一の顔よく見れるし、あったかいし、新鮮だ。悠一の負担になるのは分かってるけど、離れ難い。


「起きないの?硬いでしょ、おれの膝」

「おれ硬めが好きだから丁度いいよ。悠一は足、痛かったり痺れたりしてないか?」

「…してない、って言ったらこのまま?」


質問を質問で返すのは良くないぞ。そう思いながらにやりと笑ってる悠一の頬をつねる。悠一は楽しそうにいててと笑いながら言った。くそ、可愛いな。つかなんだこれ、すべすべだな、同じ男とは思えない。


「…このままも良いけど、おれ的にはハグもオススメだな。どうする?」


見た目より柔らかかった頬を開放して、悠一の髪に触れる。明るい茶色。そのまま頭を撫でる。悠一はふい、とおれから目を逸らして、口を開いた。


「……足、痛いし痺れた、…んだけど」

「ふはっ、そっか、悪いな。お詫びに……ほら、来いよ」


その表情は見えないけれど、照れていることはよく分かった。身体を起こして、胡座をかく。座るのを促すようにポンポンと胡座の上を叩くが、悠一はまさか膝の上とは思っていなかったらしく、戸惑った表情を浮かべている。なんか久々に見たなその顔。口角が上がるのを感じながら、渋っている悠一の身体を有無を言わさず引き寄せて、胡座の上に乗せる。


「う、わ…! っ、___さん、おれ重いからいいって…!」

「おれだって重かっただろ?お詫びなんだから、良いんだよ」

「けど、これは…っ」


少し赤い顔でいつになく抗議する悠一に楽しくなってくる。そんなに恥ずかしいのか。まあ確かにちょっと恥ずかしいけどな。今は二人きりなんだし、どろどろに甘やかしたい気分だ。がちがちに身体を強ばらせている悠一に苦笑する。甘えるの下手だよなー。


「ほら力抜けって」

「いや、この状態で力抜けるわけ、んんっ」


なら力抜けることをすればいいな。悠一の口内を貪るように荒々しく口付けをすると、意識がそちらに行くのか段々膝が重くなる。どちらのともつかない唾液を飲み込んで、口を離す。


「力、抜けれたな?」

「っはあ、……っあーもう、…___さんホント狡いって…」


顔を隠すためか自棄になったのか、自ら抱きついてきた悠一を抱きしめ返す。お前はホント可愛いよ。おれは更に口元を緩ませながら、静かに目を閉じた。


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