狼ストリップ




「___、離れろ」

「えー。いやでーす」



ぎゅうっと野球の自主練終わりの隼を後ろから抱き締める。ああ、これこれ!引き締まった筋肉、ゴツい骨格、低い声、汗の香り…これだよ、俺の求めてたものは!



「嫌じゃねぇ、離れろ」

ごちっ


脳天に降り下ろされた固い拳に思わず いてぇ!と声が出る。ついでに目にも生理現象で涙が滲む。隼から飛び退いて手で患部を抑える。なんだこの拳、脳がじんじんする…絶対たんこぶになった…。ようやく少し落ち着いて、隼に抗議するため口を開く。年々攻撃力上がってるよ隼。



「痛いよ隼!おま、まさかいつもこれをあの幼児達に…!?」

「アホか、アイツらには流石に手加減する。ただし お前は全力だ」

「ひどい!俺にも優しくして!」

「うるせえ、もっかい殴るぞ」



キュッと握られた拳をチラつかせられると もう黙るしかない。だって俺はただの美術部員だ。完全なるもやしっこなわけで、背は何とかもやしパワーで高いが、ウエイトも筋肉量も平均を大分下回る。綺麗に腹筋が割れてる隼に嫉妬してしまう。怯えながらチラリと隼を見ると 黙った俺に満足したのか、野球のユニフォームを脱ぎ始める。うおお!キタ至福タイム隼のストリップショー!!



「………」

するっ…、白のユニフォームが隼の手の中に収まる。

「………」



しゅる……、と布の擦れた音がして、中に着ていた黒のアンダーシャツを脱ぐ隼。瞬間上半身が輝く。裸体が眩しい。隼が中にタンクトップとか着るタ イプじゃなくて良かった。バランスのとれた筋肉。焼けて少し小麦色の首や手首と違い、真っ白な肌に思わずドキドキしてしまう。あまりに綺麗で、ごそごそとTシャツか何かを探してる隼を後ろから抱き締める。隼の旋毛が見える この格好が好きだ。ついでに隼の両腕を拘束する。



「…………」

「…あれ?隼?怒んないの?」



すうっと隼が息を吸って身を軽く屈める。どうしたんだろう、と見つめていると、隼が跳躍し、さっきまで可愛いなあと見ていた隼の旋毛が俺の顎にクリティカルヒットした。



「っ゛〜〜〜〜〜!!!」

「ここで変なことしようとすんな、邪魔するなら出てけ」



石頭な彼はそう吐き捨てると 鞄の中からTシャツとYシャツを取り出しテキパキと着替えた。痛みに悶えて いる間に下も着替えたらしく、俺の前にスポーツバック片手に立っている。速いよ、俺今日隼の下半身見れなかったじゃん。あの真っ白な筋肉質の太ももを網膜に焼き付けれないなんて…つらい。



「いつまで座ってんだ、帰るぞ」

「いってーんだってば…この石頭め…」



まだジンジンしてる顎を手で擦っていると、隼がしゃがんで俺の手を退ける。にやっと隼の口の端が歪んだ。



「ださ、マジで真っ赤だな」

「か弱い俺になんたること」

「どこがか弱いんだよ」



隼は笑ったまま目を細めると、顔を近づけてきた。お詫びのキスか、こうすれば俺の機嫌が直ると思ってるんだろうなあ、まあ直るけど、と目を瞑ると何か感触が顎にあった。



「えっ!?え、ちょ、え?、は、隼??」

「ん、ちゅ、だまれ」



ペロペロと俺の顎の赤い範囲を舐めたり、厭らしくリップノイズを立てながら吸い付いたりする隼にゾクゾクしてしてまう。背徳感とか、興奮でぐちゃぐちゃする。堪らず、隼の顔を両手で挟み、引き寄せる。尻餅をついてしまったが気にしてられない。あどけないきょとん、とした顔で俺を見ながら、俺のお腹に手をついて太ももに座ってる隼に、堪らなくなって深く口づけた。



「!!んぅっ、ん゛ん…っ、は、た、んま、!んんっ、ぁ、はっ、 ん゛んっ」

「…っ、はやと、ん、…」

「っ、ん、ん、っ、ぅ、___っ…!っは、っは、はぁ…」



舌を吸うたび身体を大袈裟なくらい震わせる隼にむらむらして、つい、名前を呼ばれるまで夢中でがっついてしまっていた。
つぅ、と肩で息をする隼の顎を伝う唾液を舐めとろうと顔を近づけるとアイアンクローを食らった。隼は唾液を手の甲で拭うと立ち上がった。



「帰るぞ」

「…はーい」

「……バーカ」

「…うん、ごめんね」



俺のも、隼のもゆるく起っていたが、流石にもう真っ暗だ。お互いに見なかったことにして部室を出て、隼が部室に鍵を掛けた。鍵をしっかりしまったのを見てから、彼の左手を指を絡めて握る。隼はチラ リとこっちを見ると足を速めた。その耳が、赤い、なんて。
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