小説 | ナノ
一緒になれない、そして知らない君
パルムポルムで、父さんと別れた後サッズさんとヴァニラさんを助ける為にシド・レインズさん達の力を借りて旗艦パラメキアの中へ乗り込むことが決まった。
怖くないといえば嘘になるのだけれど、今は皆がいるから大丈夫だと思えるようになった。
恐ろしいと思う。嘗てはスノウが憎くてたまらなかったのに、今は憑き物が落ちたかのように、寧ろどこか清々しくも。
母さんを忘れたわけじゃない、忘れるわけがないと。
心の持ち方を変えられることはいいのだろう、しかし時はどうしても還らないのだ。あの無駄とも思えた時間や母さんとの優しいときはいつしか埋もれてしまう。
僅かに俯いて静かに右手を握り締めた時だ。
ホープが顔を上げた先には、いつも誰かしらと一緒に居る筈のメイルフォードさんがひとり、ぼうっとしたまま空を見つめている。
そういえば一度、PSICOMの兵士たちに包囲されてしまった街に潜入する際ライトさんと僕とメイルフォードさんの三人で居たのに、メイルフォードさんは突然一人でこの場を押さえると言った。
彼女の実力は知っていたけれどやはり危険な事には変わりないから、ライトさんも、勿論僕だって反対したんだ。
だけど、
『大丈夫。 ―――…帰るから』
なんて言葉、どう捉えたらいいのかわからないままだった。
まるで何処かに行ってしまいそうな、そんな予感さえ覚える酷く悲しい言葉。
今だってそうだった。
僕らをよく見てくれていて、いつだって何でも聞いてくれるメイルフォードさんは暖かくて頼りがいがあった。
しかし、考えてみれば。
彼女はいつも自分のことは何も語らないし、後回しだった。
そのまま無意識のうちにメイルフォードの背に近寄り、手を伸ばそうとしてみたけれど。
僕なんかが触れてしまっていいのだろうかと彷徨ってしまう指先。
きっと、他人から見れば酷く格好悪いんだろうな。
こんなにも近くに居るのにメイルフォードさんはいつだって僕らとは違う世界に居るみたいだったから。
「どうしたのさ、ホープ」
矢張り気がついていたんだ。
メイルフォードさんはずるい、かあさんのようになんでも見透かしてしまうんだから。
「何でも、ありません…みんなの所に居なくていいんですか」
ホープが聞いてみたかった疑問をぶつけてみれば、彼女はさして変わらない表情のまま口元で笑った。
「変な事聞くねぇ。 ここにいるじゃないの」
いないです、
だってこんなにも触れたくても掴みたくてもあなたはいないみたいなんだ
こんなにも理解できない淋しさを感じる理由を知るのは、もう少し後のこと、
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