小説 | ナノ
おまえが言えば私はそこにいるから


「メイルフォード、お前元軍人だと…」



普段耳にする事はままならない、寧ろ聞くなんてことありえるとは思えぬライトニングの僅かながらに驚愕の色を含んだ声。
そういったのを聞くと、改めて彼女は女性であるのだと感じるのだがそれは当たり前だ。
彼女の壮美な表情の裏には、本当は歳相応の穏やかさなども兼ね備えているのに。
つくづく勿体無いと思いながらも口にすれば、呆れられるか怒られるのでメイルフォードは、さして驚いた様子もなく笑って返す。


「そうだったねぇ、そんな時代もあったな」


「どうして言わなかった、言ってくれたのならあの時…お前を傷つけてしまう言葉など…!」


「気にしてはいないよ」


だけど。と、一端言葉を切ったメイルフォードは静かに息を吐きながら両手を頭の後ろに回す。
そうして顔を見られたくないかのように、ライトニングの視線から逃れるように身体を翻し空を仰ぐ。
僅かに傾きかけている空の色が、メイルフォードとライトニングを模っている。肌を撫でる風はひどく穏やかであったのに、どこか冷たいような気もした。
それは普段笑みばかり浮かべて他人より決して目を逸らしたりしないメイルフォードが、初めてライトニングから逃げているような錯覚さえ覚えたからか。

ライトニングは、彼女が見ていないことを知っている為に、滅多に変えぬその表情を少しだけ悲しげに歪ませた。



「……何れ聖府に乗り込むんだったっけ?」


「ああ、このコクーンや人間をファルシの言いなりのままにしてはおけない」


「じゃあそれまでこの話はおあずけー」


「―――は、?」



突然いつもの笑顔に変わったメイルフォードに呆気に取られてしまい、ライトニングはまだ先ほどの余韻が残っていないか顔を強張らせる。
しかしそれが仇となってしまった、メイルフォードは相手にその心の内を隠すのも上手いが、相手の雰囲気を読み取るのも得意だった。それでも彼女はその事を言葉にしない。ただ、静かに穏やかな色をそのまま瞳に映し出す。




(そうだ、軍にいた私が見たことがあるのは)




「それまではさ、楽しんでおきたいじゃないの。 戦い終わったら皆ずっと一緒じゃないからなぁ」



彼女の、メイルフォードのその言葉に込められていた意味が、どれほどの想いが詰められていたなんて知らなかった
私は彼女をその双眸に似た漆黒の世界より救い上げてやれなかったのだ

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