小説 | ナノ
この揺り篭の波音
下界のファルシにセラが捕まっている
そう、何時ものお得意な笑みさえ忘れてしまったかのように、深くうなだれたスノウが呟いたのは数分前。彼らが決して揺るがない程の愛情を互いに認め合っていることは既に知っている。だからこそ、誓いにも似たネックレスが揺れているのを見ていると、セラに既に贈られているモノを憎みたくなる。ルシの、証を。
「―――で、私に何かしら手伝いしてくれってこと?」
「…頼む、約束したんだ。ずっとセラを守るって」
「だけど現にセラを守りきれなかったじゃあないか、信用できないねぇ」
そうメイルフォードが彼へと向けていた視線を逸らしこの場を離れようとしたら、急に手を引っ張りメイルフォードの目から視線を逸らさずに、スノウは切実さと、懇願、少しばかりの焦燥を孕んだ声を張り上げた。
「セラを助けたくないのか!俺はセラを助ける為ならどうなったっていい、だから…!」
「そんな気持ちなら尚更一緒に行けないなぁ」
「どうしてなんだメイルフォード姉さん!」
今にもつかみ掛かりそうな彼を見ていれば、どれほど彼女を大切に思っているか痛いほど想いが身に滲みる。だからこそ、彼には気付いて欲しいというのに。
「…スノウ、」
彼がメイルフォードを引き止める為につかんでいた手の上に、自由の利く空いた手で優しく被えば、微かにスノウの手が震えた。
「セラだけが助かってもな、君が居なければ意味がないだろう?」
皆で帰るぞ、
そう笑ったメイルフォードの言葉に、スノウはただ言葉を失いつつも、縋るようにしてメイルフォードを掴んだままの手を離すことができなかった
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