小説 | ナノ
流れ星へなる為に


「僕にはメイルフォードさんの考えがわからないんです」


「唐突だねぇ」


「だって…信じられるわけないじゃないですか」



確かにこのコクーンで生きる者にとってメイルフォードの考えや行動を理解出来る者など一人もいないだろう。望んでもないというのに疎ましいルシという刻印をファルシに与えられ、そうなれば誰だって悲観したくなる。現にホープだってそうだ。巻き添えをくらってしまっただけなんだ僕は。

だから、目の前にいつだって悠然と佇みあらゆる出来事を楽しんでいるメイルフォードが煩わしくもあり、羨ましかったのだ。どうして、笑っていられるのだと。コクーンのルシである彼女はいつか僕らの敵になってしまうかもしれない、今だって軍に追われる身であり、捕まれば処刑されてしまうというのに。

ホープの心境をわかっているのか定かではない。しかし今ホープを見るメイルフォードの瞳は酷く穏やかだった。紅いシャドーをわざと目を這うように引いた、類いなる異端を孕んだそれは。


「ルシだってご飯を食べれば寝たりするし、人を好きになったりする。そんな当たり前なことを忘れてどうするのよ?それと同じさ、私が生きるのは」


そうやってメイルフォードさんは決まって口元に笑みを模るのだ。あいつみたいな僕には憎くて堪らない純粋な笑みではなく、わざとらしいくらいの。それが唯一、僕がキライなメイルフォードさんの癖。


「…そもそもルシである事が当たり前じゃ、ないです」

「そうだろうね、でも夢くらい見たっていいんじゃないの」



ホントは辛い筈なのに隠すから、僕にはメイルフォードさんがわからないままなのだ。

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