13-2部屋 | ナノ
◇プロローグ:ヴァルハラにてU


それは緩やかな眠りであった


何時も見送ることしか出来ぬ己の無力さに、幾度嘆いたことであろうか。
守護者であり誓約者である限り巫女を守ることが使命であるこの私が出来るのは、ただ散り逝くはかない命の名残に触れること。
何年、何十年何百年幾重の時を重ねても変わることのない運命などどうかしていると、どうにかしてやろうと。
不死の身であり記憶を継ぐ者として私はただ願っていた――
ユールの解放を






女神を脅かす者に反応するかのように一斉に空を埋め尽くさんとする時空モンスターの出現に、女神エトロを守ろうとする者も駆け出した。
騎士であるライトニングも己の剣を持ち、共に戦うオーディンに跨り戦地を一陣の風のように景色を凪ぐ。

彼女がたどり着くより先にシヴァが先制を仕掛けるがカイアスはいとも簡単にそれを防ぎ、片割れの子を掴むと無常にも片割れの子へ目掛け放る。
召喚獣である姉妹を容易く退けてしまう力にメイルフォードは一瞬眉を顰めるが、此処で怖気づいては居られない。
自分もライトニングと共に戦うと決め、ヴァルハラに居ることを望んだのであるならこの命を懸けて応じなければならないのだ。
ヴァルファーレへ一言小さく告げると小さく鳴いた後、大きく旋回する。
モンスターの攻撃を宙で避けながらメイルフォードは急速に降下するヴァルファーレの風を纏い背を蹴り、ダブルセイバーを振り被る。


「―――ハァアッ!!」

「―――っふ、」


無論その程度で止められるとは思ってなかった。
激しく互いの刃が噛み合い甲高い剣の音を纏い斬撃が火花を散らす。
振り向き様にメイルフォードの姿を捉えるとカイアスは静かにその双眸を細め、嗤った。


「『ファルシの傀儡』が女神エトロに救われたか。だが、君にとっては転生の時は悪夢に過ぎない。あのまま永劫なる眠りにつけていたらと――そうは思わなかったか?」


「お生憎。生まれた理由がどうであれ、生き方を決めるのは私さ」


雄弁さが取り得かのように振舞うのは確かな実力があるからなのだろう。
メイルフォードのダブルセイバーを防いだ剣を片手で支えたままに、空いた手を交差する視線の間に差し伸べる。
まるで彼女に対し訴えるかのように。メイルフォードならば無限の転生を繰り返さざるを得ない時詠みの巫女を看取る過酷さを嘆くカイアスの心がわかるだろうと、そう囁くように。


「成程。予測していた通りの答えに感謝しよう。……君ならば、ユールを見届ける私の想いを汲んでくれる。私の手を取ってくれるのではないかとな」


「バカ言わないで欲しい、君の代わりになれとでも? その子の本当の想いを知らなければいけないのは君の方さッ!」



瞬発力に賭ける。噛み合ったままのダブルセイバーは可変できる特性があるのだ。
カイアスの剣を防いだ刃はそのままに下部の刃を手に取る。流れるように刃を滑り込ませ抉るように武器を振るうが其れは空気を抉っただけ。
背にライトニングが駆けつける気配がする。だが女神の騎士達が集う前に彼は力を振るった。

天を突く強大な力の元、まだ戦いは始まったばかりであった
負けてしまったら永劫の時の無しか訪れないこの退けぬ戦いは



ライト 君は何時もそうだったな  私と似た者同士、解ってるくせに言えなかった

お互い 怖かったんだろうね


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